さわやかな五月晴れが続いている。どこを散歩しても目に映る自然の景色は美しい。
見慣れている住宅街を散歩しても楽しい。「いつもきれいにしていますね。」庭いじりを
している家の前で声をかけると、嬉しそうな顔をこちらに向けて会釈が返ってくる。
今年は5月の連休中、お店を開けた。お店は原則として毎月第2週の一週間だけ営業

することに決めていたが、連休後にサンデッキの解体工事を予定していたので、連休中
は店を開けることにした。「5月の連休はわが街で愉しもう。」と黒板に書いて、通りに看
板を立てかけた。どこにも出かけられない状態だったが、友人、知人、常連さんなどが来
てくれて、楽しいひと時を過ごすことができた。ドイツのルフトハンザ航空のパイロット養

成校で訓練を受けているM子さんのご両親と久しぶりにお会いした。何をやっても、ものに     
してしまうM子さんはダンスのバレエをはじめ、歌の方でもアメリカ留学中に声楽のレッス
ンも受け、帰国後はライヴハウスに出演したり、持ち前の英語力を買われれ外国人が出
入りするレストランから声がかかったりしていた。将来の方向性を定めるにあたって本人

は的を絞り切れず、大分、悩んでいたようだ。最終的に自分の第一の夢であるパイロット
になることを決心して、単身で見知らぬ地、ドイツへ彼女は旅立った。
現在、ジェット機を操縦する段階まで進んでいるという。近々、テストがあるのでM子さん
は猛勉中だ。歌うことは後でもできる。パイロットは今を逃したら永久になれない。一本に
       
絞って良かった。「将来、ルフトハンザの女性パイロットが余暇の時間にライブハウスで
美声を披露したら、きっと人気者になるよ、彼女は。」 父親の友人は目を細めてにっこり
笑った。彼のスマホを開くと操縦席に乗っている素敵なM子さんの写真がパッと出てくる。
いつか彼女が操縦するルフトハンザでもう一度ドイツに行ってみたいものだ。

 さて、一昨日からサンデッキの解体工事が始まった。このサンデッキ、何度ペンキを塗っ
たことだろう。4〜5年に一度はペンキを塗った。エルヴィス・プレスリーのCDを聞き、缶ビ
ールを飲みながらウキウキ気分でペンキ塗りを愉しんだ。塗り終わってあざやかに蘇った
白と緑のサンデッキを見つめ、達成感に酔いしれる気分は自己陶酔の最骨頂である。

だが・・・・・もういけません!ペンキ塗り・・・・・・重たい存在になりました。
ところで、我が家のサンデッキには小鳥小屋付きのエサ台が取り付けてあった。いつもひ
まわりの種とパン屑を置いている。シジュウカラとキジバトが毎日のように、向かいの市民の
森からやってくる。エサは食べても巣箱には今まで小鳥たちが入ったところを見たことがな

かった。ところが、最近になってシジュウカラが頻繁に小屋と森を行ったり来たり飛び交って
いる。何か口にくわえているようだ。ひょっとして巣作りでも始めたのだろうか。
ワイフと二人でその様子をじいっと観察していたら、ピューッと素速い勢いで小さな穴へ入っ
て行った。何回も何回も森と巣箱を往復していた。翌日である昨日、早朝に、私はさざんか

に巣箱が置ける台を設置した。その日デッキは取り壊される。場所を変えるしか方法はない。
移動した後、シジュウカラが巣作りを続行するのか心配だ。デッキの取り壊しが始まって、し
ばらくすると工務店の親方が巣箱を取り外して私のところへ持ってきた。「ダンナ、中から雛
の鳴き声が聞こえるよ。」 巣箱を高く持ち上げて二人で中をのぞいてみた。

暗くてよく見えない。やむを得ず二人で私が早朝にさざんかの木に設置した台の上に巣箱を
取り付けた。遠くにある電線に止まってシジュウカラが異様な声を出して鳴いている。「ああ、
かわいそうなことをした。もっと早く気が付いて移動しておけばよかった。」 私は悔やんだ。
やがてそのシジュウカラは姿を消してしまった。

片づけごとをしていても気持ちが落ち着かない。「シジュウカラには、申し訳ないことをした。」
「あの子供は置き去りにされて死んでしまうのかな。早く動かしていれば・・・・・」
それから2〜30分後である。「あなた!シジュウカラが入ったわよ」 「本当か!」私は興奮
していた。

夕方、作業の人たちが帰った後、ワインでワイフと乾杯した。山形で買った朝日町の赤ワイン
は極上の味がした。取り壊されてしまって、いつものようにサンデッキでは飲めなかったけれ
ど、ワイフの故郷の赤ワインの味は忘れられないものになった。 
 2013年05月10日  NO.454 「良かった!ほっとした」