マスターの日記

   NO.519 「山葡萄ワインに酔いしれて」   2018年2月3日(土) 
 
     
  
今頃A君はミャンマーで新しい仕事の準備に忙しい毎日を送って
 いることだろう。彼とは先週、我が家で数年ぶりに再会した
 A君との付き合いは彼が小学校4年生の時だったから20年以上に
 なる。成績優秀な生徒だったが、私はそれ以上に彼の天真爛漫で

 好奇心旺盛な伸び伸びした性格に魅力を感じていた。納得がいか
 ないと気が休まらないで鋭い質問をしてくる。時には、学校の先生
 を困らせたこともあるようだ。そのことで彼から相談を受けたことが
 ある。私はその内容を彼から聞いた時、「君の考えの方が正しいと

 思うよ。先生もプライドがあるから、困らせないように話したら良い
 んじゃないの」 とアドバイスした。「わかりました」 さえない表情
 が一変して、晴れやかな、すっきりしたいつもの顔に戻った。私は
 この一件を鮮明に覚えている。

 彼は高校時代から法律に興味を持ち、将来の仕事として弁護士を
 考えるようになった。大学受験では第二志望の学校に通い卒業と
 同時にアメリカの大学へ、そこでも彼の好奇心は収まらず、歴史関
 係の学科にのめり込んでゆく。帰国後、やっと司法試験の勉強に

 取り掛かる。独学から法科大学院を経て司法試験に一昨年合格。
 沖縄で司法修習生を終了し、弁護士となった。今年35歳になる。第
 一志望の大学に合格し、卒業してすぐに司法試験に合格し、25歳
 で弁護士になる人もたくさんいる。だが、A君は自分に納得のいくよ

 うな道を通って自分の目的に進んでいる。最短コースで弁護士にな
 った人では到底得られないような貴重な体験を積んできている。こ
 れこそが彼の宝物なのだ。ここでは語りつくせないような楽しい話、
 つらい話を時間を忘れてワイフと3人で語り合った。彼の話し方、話

 す内容、自然に出てくる気配り等々は彼の今までの日常生活から
 生まれ出てきたものだと、私は感じた。
 立派な青年とはA君のような人を言うのではないか? そんな彼が
 ミャンマーへ発つ前に、わざわざ我が家を訪ねてくれた。

 その夜、私たちは自家製の貴重な山葡萄ワインを2階から持ってき
 て、ふたりで心地よい余韻にしばらくの間、酔いしれた。