NO.574 「夢を買う」 2022年3月28日(月)

 先日、友人のO夫妻と町田の紅しだれ桜を観に行った。
この桜は樹齢58年、個人宅の大樹でシーズンになると自
宅の庭を開放し夜はライトアップまでしている。知る人ぞ
知る桜である。Oさんも同じ桜を育てているのでご一緒し

た。Oさん達と合うのは久しぶりである。我が家にある山
葡萄は彼らから分けていただいたものである。お互いにワ
インを造り、味比べしている間柄だ。桜を鑑賞した後、我
が家でお茶をした。会話が弾み若い頃の話に話題が移る。

そこで私とご主人が同じような体験をしたのにはビックリ
した。
新婚時代の頃である。山形育ちのワイフと結婚して私の故
郷、世田谷は自然豊かな山形にかき消された。夏休みにな

ると時を惜しんで山形に出かけた。そして、将来の展望な
ど考えずに山形の農家を衝動的に買ってしまったのだ。葡
萄畑やリンゴがあり、夜になると星が輝き遠くに山形市内
の灯りが見える。ロマンチックな風景に我を忘れていた。

夏休みに教えている子供たちを連れて合宿したら最高だ。
購入額は頭金だけでは買えない金額。ローンを組んで手に
入れた。ワイフがよく簡単にOKしたもんだ。山形の親類
知人はあんな処と、呆れていたようだ。その後、毎年、山

形に出かけ屋根のペンキを塗り替えたり、義弟と飲み会を
したり、それなりに愉しんだが、結局、何もせずに10年後
50万円ダウンして手放した。当時、ローンの金利は8.3%
だったから、10年間、お金を銀行に預けていれば利子も高

く倹約生活をせずに済んだかもしれない(笑)お金には代
えられない愉しい思い出、人との出合があり、財産として
今もしっかり残っている。
Oさんはニュージーランドに家を持っている。日本とは季節
が反対なので、最近は寒い冬場をあちらで過ごしている。

スキーをやるご主人は何回かニュージーランドに出かけて
スキーを楽しんでいるうちに、すっかり気に入ってしまい
衝動的に遠くに山々が見える緑豊かな場所を買ってしまっ
たと話し始めた。ニュージーランドでの生活は伺っていた

が衝動買いは初めて聞く話だ。お金の計算もせずポーンと
買ってしまったという。そう、彼は夢を買ったのだ。その
後おつりがくるほどOさん夫妻は別邸を利用している。
私はいつもエリカの歌声喫茶で橋幸夫の「いつでも夢を」

と千昌夫の「北国の春」を選んで歌った。この2曲は自分
にぴったりな曲なのである。

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