ホフディラン アルバムレビュー(第9回)

『WASHINGTON, C.D. その3』2011.1.1

ワシントンCD VS ユウヒビール(2)


 前回、本欄では、ベイビーの「信号は黄色ばっかりだ(自殺(仮))」と、ユウヒの「黄色は自分で決めろ(信号)」をあわせて考えると、自分で決めることばっかりだと解釈できることを述べた。では、ワシントンCDに収録される他の曲は、どうだろうか。

 先般、紹介した「自殺(仮)」に、このような歌詞がある。

everybody have ●● tonight (1)

 歌詞カードでは、●●には、「◎◎◎」になる前の昔のポニーキャニオンのロゴが入っている。ここで、筆者にひとつの疑問が沸いた。普通、英語の文法的に言って、everybodyの後は、haveではなく、hasになるのではないだろうか?

 その答えは、意外なところにあった。ユウヒビールの歌詞に、このようなものがある。

Everybody, Have a FUN tonight. (2)

 なるほど、これならばhaveは命令形なので原形のままでよい。つまり、(1)の歌詞も、命令形である可能性がある。

 全く確信のない情報なのだが、「自殺(仮)」は、元々、「自殺をしよう」という曲名であったと聞いたことがある。確かに、「自殺をしよう」という曲名は、多摩川レコードの「呼吸をしよう」から連想される、ホフディランらしいギャグといえる。とはいえ、さすがに自殺をしよう、では発売許可が下りないだろう。覚醒剤音頭の二の舞になってしまう。そこで、「自殺(仮)」としたという説だ。

 では、●●には、何が入るのが自然だろうか。筆者は、●●=自殺ではないか、と思っている。全部の●●に「自殺」と入れて、歌詞を通して読んでみると、とんでもない歌詞である。こ、これは、覚醒剤音頭の二の舞になるだろう……。

 上記仮説を総合すると、(1)は、「Everybody, have a 自殺 tonight.」と解釈できる。そして、意訳すると、「自殺をしよう」となるのである。


 2回にわたって、「自殺(仮)」について分析してきた。これだけ、完璧な設計の「自殺(仮)」だが、いまだ分からないこともある。4行目に、「リハーサルで燃え尽きるんだ」とある。対になる歌詞は、やはりユウヒビールにあった。「Baby Song」である。Baby Songでは、ユウヒはベイビーに「リハの時に準備しとけばいいのに」と言っている。この違いは何だろうか。あえて反対のことを言っているのだとすれば、「自殺(仮)」の設計は、驚嘆せざるを得ない。これが、プロの技か。




WASHINGTON, C.D.




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