(2010/7/3)
暑い。エアコンが切れているらしい。
昔から見てきたバンドが夏真っ盛りにメジャーデビューした結果、こんな暑い日に誕生祭を開催せざるを得ないことを疎ましく思いつつ、定刻を過ぎても始まらないステージをスタンディングの最後方で眺めていた。
最近、体調が優れず、今日も行くかどうか最後まで悩んだが、なんとなく惰性でここまで来た。
会場は8割は女。だから最後方でもステージは良く見える。後の2割の内訳は、無理やり女に連れてこられた男が1.5割といったところか。
汗がだらだら流れるほどの行き詰る気温、湿度が高くべたつく服。不快指数はどんどん上がっていく。開演予定をもう15分は過ぎているだろうか。折角確保していた視界が割りと背の高い男のせいで途絶えてしまった。予想通り彼女連れだ。多くは彼女によって連れて来られているんだろうから、彼女連れという表現はおかしいか、と無駄なことを考えながら、俺の精神的不快指数は上昇を続けた。男のあごに生えた髭が俺の不快をさらに上昇させる。女のほうはさっきから落ち着きがなくて……うーん、ちょっと○カっぽいのか。
やはりというべきか、プー子のほうがヒゲオを無理やり連れてきたようだ。なぜ分かったか? プー子のTシャツを見れば明らかだ。ヒゲオは普通のシャツだし。プー子は結構高いヒールを履いていた。なぜライブにヒールなんて履いてくるんだろう。
「久しぶりのデートでおしゃれしてきたんだよ」
「でも、何で全く興味ないバンド見に行かなきゃなんねーの? せっかく大阪から会いに来たってのに」
「だって、このバンドも昔から好きでね」
気がついたら、バンドの演奏は大分盛り上がりを見せていた。
ヒゲオは退屈そうに、プー子の背中を揉んだり、肩に傘を引っ掛けたりしている。それでも相手にされなくて、とうとう出て行ってしまった。バンドがビールの商品名のような曲で今日最高の盛り上がりを見せたとき、一人になったプー子は、ヒールを脱いでぴょんぴょん飛び跳ねていた。
いつの間にか会場にも冷房が効いていて、汗は引いていた。疲れていた心も少し癒された。同時に自分の心が相当荒んでいるのに気づいた。
関係ないのだが―――。
今回は、1階の有料観客席に、「関係者」と思われるいやな客がいた。
1人、2人ではなく、10数人だ。彼らは開演後に入ってきて、大声で騒ぐので演奏が聞こえない。「身内」が紹介されると、またキャーキャー。まじめに聴いているようには見えない。大声でいやでも聞こえてくる会話によれば彼らは「関係者」のようなので、たぶん無料入場だろう。演奏が始まっても、入り口から出たり入ったり。もう勘弁してください。同じところで見るのは。ということで、レビューを書く気は全く起きない。当分、見に行きたくない。そう思った。