|
あいばひでお。1967年新潟県生まれ。時事通信社勤務。経済部で日本銀行、東京証券取引所などを担当する。
2005年、「デフォルト 債務不履行」でダイヤモンド経済小説大賞を受賞して作家になる。 |
著書は他に「株価操作 マニピュレーション」「ファンクション7」など。 |
|
デフォルト 債務不履行 平成19年11月初版 角川文庫 ISBN 978-4-04-387201-5 629円+税 単行本は2005年、ダイヤモンド社
|
( この小説の対象 ) 金融機関、新聞記者、日本銀行、財務省それぞれの思惑によってゆれ動く日々がえがかれている。 著者は、時事通信社の経済部記者で日銀、東証などを担当していたから、創作とはいえ、現実をかなり反映した作品だろうと思う。 ( たくみな人物描写 ) もしかしたら、それぞれの登場人物にはモデルがいるかもしれない。私は金融界で働く人たちを何もしらないので、これはあくまで想像にすぎない。 なぜこんなことを書くかというと、新人作家とは思えないほど人物描写がうまいからである。 部下を軽蔑しきっている幹部、出世競争の鬼になった人物のあくどい習性、正直者のくやしさなどが、わずかな文字数でみごとに表現されている。 著者は他人の性格や内面の特徴をとらえる鑑識眼を鍛えてきたように思える。新聞記者として、かなり苦労を重ねた結果だろうか。 若い頃から文学しか関心をもたなかった人は、人物描写は案外へたな場合が多い。あるいは、世間の規格から大きくはずれた人物しか書けなかったりする。 ( だけど投げ出した ) だけど、全351ページのうち175ページまで読んだ時点で、投げ出した。ちょうど半分だ。全体は 5 章で構成されており、そのうち 4 章の初めまで読み終えたことになる。 小説はこれから山場を迎えるはずだが、読んでいて重苦しくなるのである。各章の中心実物は、幹部連中から邪魔者扱いされ蹴落とされて、それぞれ厳しい世界から脱落してゆく。 幹部は銀行の頭取、証券会社の専務それに財務大臣や日銀総裁などといった具合で、私のような凡人には雲の上の人たちばかりだ。 この人たちが、東北地方の銀行をつぶそうと談合したり、銀行検査で圧力をかけたりする。それを新聞記者がかぎつけて記事にする。エコノミストが激しく批判する。こんな小説だ。 だけど、つぶされる予定になっている銀行の役員や行員がひとりも登場しない。その銀行の行く末をもてあそぶ連中の視点だけで話はすすんでゆくから、なんとも味気ない。 読み終えた範囲でいうと、「敗北者列伝」とでもいいたくなる小説だ。敗者復活戦はあるのだろうか。結末がどうなるにせよ、読書して、ストレスをわざわざ背負い込むのは愚かしい。 ( 読者によって評価は大きく異なる? ) 「デフォルト 債務不履行」は、ひたすら仕事の話ばかりが、はてしなく書かれている。でも、たいていの小説では、本筋とは関係ない物語も同時進行で描かれる。これをサイドストーリーという。車でいえば、ハンドルの「遊び」に相当する。 だけど社内人事や派閥の結束、上司の悪口が大好きな人だったら、「デフォルト 債務不履行」は、かなり興味深く読めると思う。新人作家の作品とはいえ、大変な傑作だと評価する人がいてもおかしくない。 |
| http://www7a.biglobe.ne.jp/~katatumuri/dokusyo/kansou2/aiba.htm |