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三咲光郎 |
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みさきみつお。1959年大阪府生まれ。関西学院大学文学部日本文学科を卒業し、大阪府立高校の国語科教師になる。
その傍ら小説を書き始める。1993年、堺市自由都市文学賞を受賞する。 1998年「大正四年の狙撃手」でオール読物新人賞を受賞する。 |
2001年「群蝶の空」で松本清張賞を受賞する。
著書はほかに「銀河のひややかな瞬き」がある。 |
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忘れ貝 2004年11月第1刷 文藝春秋 ISBN 4-16-323520-5 1429円+税
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波乱に富んだ物語を期待する人には物足りないだろう。
この欄を書いている2008年1月現在、阪神淡路震災が起こってから13年になる。小学生にはもう震災の記憶はない。 小説の主人公、美奈子は神戸市に住んでいるときに震災に遭った。そのあと夫が高知市に転勤になったので、ちいさな息子を連れて高知市に移り住んだ。 ところが、ふとした不注意から息子は交通事故に遭って死んだ。夫とも別れた。独りきりになった美奈子は、大阪府の南端に住む両親の家にもどり、町役場の電話交換手になった。 これら一連の不運が心の重荷になり、パニック障害に罹った。小説に病名は書かれていないが、他の病気ではない。パニック障害は不安感から逃れられない病気だが、交換手は彼女に向いていた。 ある日、勉という小学生と出会った。勉は震災で両親を亡くし、祖父母から養われている。「 忘れ貝 」は、美奈子と勉のふれあいの物語である。 登場人物は大事件に振り回されるでなく、海岸での淡々とした日常が丁寧に書かれている。主人公は心に傷を負っている。この現実を真正面から見ないで、目をそらしている。 病気にはならなくても、ほとんどの人は心の中に、なにかしらの傷を負って生きているだろう。ときにはふと思い出して、胸がうずく かもしれない。 物語はゆっくり流れていく。その間に、主人公の気持ちはわずかずつ変化してゆく。読み終わったとき、静かな感動が胸に広がっていた。人生がつらい人にお勧めしたい。 |
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群蝶の空 平成13年6月第1刷 文藝春秋 ISBN 4-16-320240-4 1333円+税
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昭和10年代の大阪と京都がおもな舞台になった歴史小説であり、後半になるとサスペンスの雰囲気が出てくる。
登場人物は、海運業界最大手の商船会社につとめる専務、神坂良満とその妻、神坂久江が中心になっている。 神坂夫妻に、保険会社の沖宮忠雄と上司の今川勝重がかかわってゆく。4人は俳句愛好家だが、神坂良満は保守的なのに対して、久江は新興俳句にひかれている。 時代は戦時体制に向かっており、新興俳句は自由主義の気風ゆえに思想弾圧の対象になっていく。こうして 4人は時代の波にもまれていくのだった。 神坂良満の自己中心的な冷酷さ、今川勝重の権力に取り入ろうとする卑屈な生き方は的確に表現されていて、読み応えのある小説だなと思った。 だけど、迫害される人たちがなぜ迫害されるのか、どうして追いつめられるのかという肝心な点で、必然性が感じられず、説得力がない。 また、昭和10年代の風景やありふれた生活のようすが書かれていないので臨場感が欠けている。 こんな欠点はあるが、物語がすすむに従って、加害者と被害者の対立が緊迫した雰囲気をつくり出している。だから結末はどうなるのかと大いに期待させられた。 しかし残念ながら、なんともしまらない結末になっており、消化不良のままで読み終えることになった。 |
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