2002.01.29

残   像

残像
 --廃 屋 に て ---

崩壊が
表玄関の脇まで現れてきている
建物の内部には
どんな強い陽射しにが差し込んできても
木々の朽ちかけた
においのみが床であった上に
淀んでいるにすぎぬ

傾きかけた廃屋の陰が
重さに成らぬのは
人間の足音が、満たされぬ俗習の為に
駆けづりまわっているからだと思えるのだ

残像だけだからこそ
まばたき一つすれば
鬱蒼とした樹木が以前から
存在していたのだときづくのである。