<七 月 の 実 在>
梅雨あけた朝
排尿にともなうわずかな時間の流れの中で
目に入ってくる下着の白さが
やけに目にしみる
窓外の
屋根の日陰が地面に
一つの線を作り
明暗のコントラストが
幾何学された図形のように
そこだけ浮遊する
木々のみどりが
木々の緑と言うように塊を作り
葉と葉
枝と枝
の間に見えかくれする
風が
隣家の窓ガラスに反射する光りを
さえぎる。
--風に音を重ね
光に匂いをふりかけるように
<深 夜 の 自 画 像>
深夜
国道を
トラックの通過していく音が
NからK市へと
流れていく。
庭に立ち止まる私の
この存在の厚みに似たものが
緩やかな距離をおいて
私へと積み重ねられてくる
--数十分の間に通過していったのが
わずかな数であっても
例えばその音は
透明な液体の様に
素早く拡がり
透明な層をなして
私の背後で一枚一枚
かさなる
国道と庭をはさむ
家並の間を
二つの軸で
平行に拡がるように
像をつくっている。
<垂 線>
夕暮れ
雲の切れ間から
円錐状の光がひろがり
私の帰り行く方向に在る切れ間から続く
空間が
私の背後から
家並み遥かな山脈のつらなりを結ぶ時
私は
私の位置を
木々や川やS工場のポールに
はためく旗の中を
ぬう様に
歩くのをみている。
<始まりと言えそうなものへの可動>
図書館の木製のテーブルの脇で
書き物の手を休め
透明な壁画のようなガラス窓の外側に拡がる空に
目をむける
ビルとビルの上に広がる空間に一羽の鳥が
軌跡を描く
その時
私の夢の中に絶えず現れる飛翔の像が
ガラス窓のこちら側で形をなす
鳥の位置にいて
図書館のある町並みを見下ろす時
夢の中にの飛翔の像がすばやく飛び立つ
手を休めた私の鼓動と窓がラス越しに広がる
空間と言う
この形態のすべてが
すっぽりと切り取られたもののように
孤立し
海の上空に広がる雲と
空の下に流れる海との
たゆやかさを
その孤立の中に
充満させ続ける
<自分だけには、わかることがある>
たぶん、自分だけに解る事がある
左手をあげ、おろし、次に右手をあげ、おろす
と言う事のどこかで、こんなことでしかない
と言う事がある。
交差点の信号が、青になったから歩き出し
黄色になりかけたから、すばやく走ると言う事で
少なくとも一瞬の時は流れていく様に
<自 戒 抄>
お昼に目覚め、飯を食べ、又街に出ると言う事が問
題なのではな(お昼に目覚め--出る)と記す事に
より、結ばれてしまう像の位置が問われねばならぬ
一心に神経を集中していた所から空の広がった所ま
で来た時、全身がその広がりと加速度に重なる感性
を持つ為に、電車のドアが閉まりかける僅かな距離
にみあう様な動きをする自己が、発車のベルが鳴り
終わった後の余韻を捕らえるのである。
電車に乗り遅れてしまうから急ぐのであり、次の電
車にすればいいから、ゆっくり歩くと言う言う事で
いいのです。
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