隗作品抄 大山雅由選
失くなりて実家と言ふものお茶の花 大上葉子
日記買ふ仕事八分と思ひつつ 十羽野荒人
木枯の真夜の感知器触れてゆき 星 美子
秋茱萸やここは一人でくる処 小山洋子
音もなく鋏落ちけり松手入れ 大畠 薫
おもむろにマスクとる医師むくつけき 帆刈 郁
着ぶくれの鳴子こけしを鳴かせをり 土門栄子
石蕗咲けり真実人を思ふ日に 上田公子
迷ひなく独り分け入る茸とり 和田久美子
観音の十一面の小春かな 髙崎啓子
話の穂つなぐ子のをり煮大根 矢畑昌子
小春日や漕ぐてもかろき車椅子 森井和子
よろこびも憂ひも過ぎぬ白障子 斎藤八重
ふる里の海原のやう葱畑 山本武子
釣り人の立つも座るも秋の雲 井上 睦
澄む水や熊よけ鈴を鳴らしつつ 飯島千枝子
カクテルのグラスにやさし星月夜 猪口鈴枝
逆光を人浮き沈み枯芒 須賀智子
小春日や扱ひ慣れぬ松葉杖 河井良三
ネオンサイン一文字欠けて冬ざるる 山内直之
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