隗作品抄 大山雅由選
裸木となりて月影遊ばしむ 森田京子
生きてゐることを頼りに山眠る 和田久美子
箒目のきのふのままに霜の朝 金子千恵子
短日の粘土に残る指の跡 宮本恵吾
ぼろ市や昭和繕ひつつ老いて 荒井和子
アルバムの友みな笑みて冬畳 園山敬子
金目鯛大き目玉は海の青 堀内知行
イブの夜の八十路の笑顔小百合似で 猪口鈴枝
追伸に逢ひたしとあり風花す 矢畑昌子
冬菫ここは貞心尼通ふ道 帆刈 郁
蛹とも繭とも炬燵抱へゐて 十羽野荒人
闘病の十年日記七分埋め 大上葉子
塔の影ゆさぶり冬菜洗ひけり かんたけを
残されしマフラーぬくし夫遠し 須賀智子
きしきしと白菜太る近江かな 田中みどり
秋冷の寺の柱に傷一つ 小川マキ
短日の退職の日の靴を脱ぐ 長井 清
冬薔薇言ひてはならぬ独りごと 池田英子
ひとり居の色あざやかにシクラメン 崎啓子
潮騒に瑠璃深めたる竜の玉 山本武子
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