隗作品抄 大山雅由選
黄砂飛ぶ第五福竜丸朽ちて 岩本晴子
妻逝くや枯野に立ちて向き処なし 加藤一帆
蕎麦がきの湯気の中なる茂吉の忌 早川まさ
よき便り来ると思へり桜鯛 園山敬子
利休忌や一輪挿の実のこぼる 清水早苗
ネックレスちぎれて跳ねて凍返る 木林万里
賞罰のなき一生や鬼やらひ 増子英司
溶けだして人間くさき雪だるま 斎藤八重
竹垣の結を新たに梅白し 大畠 薫
ひとり居の頼みの梅の真白かな 金子千恵子
赤き旗立てて余寒の運動場 田中みどり
雛飾りともにせよとの母の声 大畠正子
赤ワインもて雛の夜の唇甘し 内山玲子
埋火や耳覚めがちに夜もすがら 山田悠子
啓蟄や己がどこかのけものめく 上田公子
冴返る日は千代紙に亀を折る 青柳明子
山中に雪踏む音や人恋し 星 義昭
日短や告ぐべきことを持ち帰る 小山洋子
漕ぎ出す一人船頭蜆舟 石井敏子
春浅し写経の文字のかすれ癖 山本武子
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