隗作品抄 大山雅由選
白光す電子辞書にも春の塵 小山洋子
潮鳴や千の雛の流離譚 山田悠子
雛祭母に重湯をまいらする 山本武子
母乳を吸ふ赤子の見上ぐお雛さま 小川マキ
翼しろたへ春光の海めざす 榎 和歌
壇ノ浦帆船のあまた陽炎へる 星川 仁
軒下の木鋤見たさに足はこぶ 北川照子
人事欄に名前を探す四月馬鹿 山内直之
神事能荒ぶる神に春一番 青柳明子
主待つ犬と自転車納税期 堀内知行
小さき手にそつと押されて流し雛 内田研二
見入りけり子に贈らるる初桜 佐藤陽子
花吹雪浴びて昂ぶる齢かな 崎啓子
啓蟄やひきこもる子に連れ立ちて 佐山 勲
まんさくや転びつ起きつ幼き子 森井和子
夕月と歩く菜の花明りかな 柳瀬明子
春星の瞬きわれに生きよとや 須賀智子
暮れかぬる自転車凭れあひしまま 関口道子
幾筋も畝の揃ひて山笑ふ 村井幸子
うぐひすや日光月光笑みかわし 北山百子
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