隗作品抄 大山雅由選
透けてきしお蚕さんのひいやりと 山本力也
早苗田や百の鏡に百の影 内田研二
雉ほろろ嬬恋村を風の抜け 荒井和子
鶯や目覚めて暮るる日となりし 佐山 勲
巡行の祭太鼓を反身打ち 星川 仁
夕暮れは人皆やさし竹の秋 長井 清
廃校のメタセコイアや鳥の恋 須賀智子
夕暮れの空あり桐は揺るる花 榎 和歌
やさしさの時には嘘を花は葉に 帆刈 郁
東密か台密かなんぢやもんぢや咲く 細見逍子
糠床をそつと起こして木の芽風 滝澤謹子
鳥の恋ビルの裏口川に向き 山田悠子
老い猫の四肢踏ん張りて春の土 大上葉子
退院の子へ一壜の蝌蚪の水 きようたけを
老犬の迎へ出でくる春彼岸 猪口鈴枝
単衣着て帯は小さめに城下町 石井敏子
花の宴齢のこともさりげなく 小山洋子
岩かげに釣人一人つばめ飛ぶ 早川まさ
転調のソプラノかなし朧月 上田公子
繭里はいま一山の青嵐 金子千恵子
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