隗作品抄 大山雅由選
歩かねば詩の生まれ来ず夏つばめ 須賀智子
守宮落つ鬱の出口の見えぬ夜 岩本晴子
子をふたり育てて越後上布かな 長井清
花みかん父祖の塚まで匂ひけり 山本武子
物騒な世に永らへて鰻食む 山上恵子
昼寝覚さて起き上がる面倒さ 河井良三
父の日のなりわい漁場の漢どち 帆刈 郁
蚕豆や幼子にある手の笑窪 青柳明子
業平は文弱ならず旱星 山田悠子
いつの日か富士に登らむかたつむり 山田泰造
聞き流すことにも馴れて氷菓かな 宮崎晴子
虫干や母の秘密をのぞくやう 上田公子
蟷螂の生れて幾日鎌を上ぐ 田中みどり
煮豆屋の老女に添ひて扇風機 大上葉子
師に供ふ山竜胆の真むらさき 榎 和歌
夏帽子少女駆け込み乗車して 荒井和子
薔薇挿して二人の仲を取り持ちし 佐山 勲
籐椅子の軋みにまかす恙の身 森田京子
梅雨深しひらがな書きの雑記帳 石井敏子
風鈴や悔いも恨みも無言坂 加藤一帆
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