2008
隗の会・8月の俳句

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     隗作品抄             大山雅由選

歩かねば詩の生まれ来ず夏つばめ        須賀智子

 

守宮落つ鬱の出口の見えぬ夜          岩本晴子

 

子をふたり育てて越後上布かな         長井清

 

花みかん父祖の塚まで匂ひけり         山本武子

 

物騒な世に永らへて鰻食む           山上恵子

 

昼寝覚さて起き上がる面倒さ          河井良三

 

父の日のなりわい漁場の漢どち         帆刈 郁

 

蚕豆や幼子にある手の笑窪           青柳明子

 

業平は文弱ならず旱星             山田悠子

 

いつの日か富士に登らむかたつむり       山田泰造

 

聞き流すことにも馴れて氷菓かな        宮崎晴子

 

虫干や母の秘密をのぞくやう          上田公子

 

蟷螂の生れて幾日鎌を上ぐ          田中みどり

 

煮豆屋の老女に添ひて扇風機          大上葉子

 

師に供ふ山竜胆の真むらさき          榎 和歌

 

夏帽子少女駆け込み乗車して           荒井和子

 

薔薇挿して二人の仲を取り持ちし        佐山 勲

 

籐椅子の軋みにまかす恙の身          森田京子

 

梅雨深しひらがな書きの雑記帳         石井敏子

 

風鈴や悔いも恨みも無言坂           加藤一帆