隗作品抄 大山雅由選
久闊を叙すに新米塩むすび 帆刈 郁
秋鯖や包丁持てぬもどかしさ 田中昭次
影富士の大きく見えて波郷の忌 内田研二
松手入れ酒を貰ひし弱り松 内山玲子
飛砂村の土の寄せある葱畑 土門栄子
追伸のごとき雲連れけふの月 須賀智子
月入れて黙々と食す味噌饅頭 佐山 勲
立待や用なきものを買ひに出づ 小山洋子
見せ消ちの人の名虫のこゑ細る 山田悠子
残る蝉力こんにゃく食うべけり 河井良三
戦なき刈田に起ちて髪吹かる 斎藤八重
詩人たる予感や栗の実の落つる 飯島千枝子
吐く息のしまらく雲に冬銀河 細見逍子
コスモスや遺影にかける誉め言葉 猪口鈴枝
迎へまだ来ぬとごちたるちちろ虫 宮本恵吾
白菊や子の掌つめたく取りてをり 長井 清
十五夜に近づきたくて瞼閉づ 田中みどり
赤まんま軽き嘘言に揺さぶられ 池田英子
十六夜やうしろから来る衣の音 森井和子
露けしや椅子一脚の停留所 園山敬子
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