隗作品抄 大山雅由選
天狼や父なくて父超えられず きょうたけを
寒鰤や魚嫌ひの佐渡育ち 笠原トヨ
狼に遭ふたが自慢百歳で逝く 長井 清
雪女郎赤いヒールを置き去りに 猪口鈴枝
一網をまるごと寒の鱈まつり 土門栄子
耳もとに母の息あり薺爪 須賀智子
土筆摘む母の秘密の基地守り 岩本晴子
メビウスの罠に堕ちたる目借時 細見逍子
姉さん六角蛸薬師には飾売 青柳明子
思惟仏のまなざしに添ふ冬すみれ 齋藤八重
冬さうび夢にあふ人みな若し 矢畑昌子
シーソーにぎつこん大寒乗つてゐる 和田久美子
才蔵のわれは看取りの笑ひ中 帆刈 郁
菜の花の中を漂ふごとくゆく 榎 和歌
街冴ゆる二十三時発神戸行き 米原健二郎
分校は今年を限り梅ま白 石井敏子
吊るされて乾鮭遠く海を恋ふ 上田公子
朝のうちだけの晴眼毛糸巻く 関口道子
女正月小龍包を家づとに 荒井和子
古希すぎの帯胸高に女正月 金子千恵子
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