隗作品抄 大山雅由選
夕さりの豆腐の白く傘雨の忌 内田研二
えごは実に小函から出すイヤリング 上田公子
曳舟の波音を聞く夜涼かな 木林万里
河鹿啼く手に掬ひたる山の水 宮坂明男
五月五日象の背中にたてがみが 田中みどり
この海を行けばふるさと飛魚跳ぶ 山本武子
狼煙台一国なべて田を植うる 和田久美子
槌音の遠く蛙の目借時 飯島千枝子
喧嘩して潜り込んだる夏布団 大畠正子
やさしさをもしやと思ふソーダ水 宮崎晴子
点滴の柱まばゆき夕焼けかな 細見逍子
水中花開けばひと日誰も来ず きょうたけを
薫風や五感ゆるりと覚めゆける 榎 和歌
青簾下げて風呼ぶ朝かな 笠原トヨ
シャンソンの巴里の夜や舟遊び 山田泰造
スクワット日課としたり青葉光 小川マキ
白靴やおのづと軽ろき旅鞄 崎啓子
花みづき風さびしさを誘ひけり 丘 舜風子
夏料理珊瑚のかけら箸置きに 永島正勝
蚕豆に綿ある不思議茜雲 玉井信子
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