隗作品抄 大山雅由選
宝生を謡ひ秋刀魚の腸が好き 金谷陽一
標高を一歩に刻むさるをがせ 山田悠子
火の見えぬ電磁こんろやどぢやう汁 河井良三
孫の名に横文字の入る暑さかな 田中昭次
高尾山旅のくくりのとろろ汁 伊藤俊彦
雪渓を歩く影あり吾の蹤く 飯島千枝子
夫の忌の籐椅子深く引き寄せて 森田京子
飯饐えてうすき縁を思ひけり 木村魁苑
文具屋の二階のカフェ辣韮漬 青柳明子
圧さへればぷちと音して夏の虫 細見逍子
無住寺へ仏見にゆく梅雨の明け 早川まさ
日に透けしほたるぶくろに何か居る 須賀智子
夏風邪や誰にも言へぬ恋をして 宮崎晴子
修道院隔ての垣の白き薔薇 石附法子
水打てばおはぐろ湧ける一樹かな 斎藤八重
賑やかに夏座蒲団の乱れをり 富岡美和
越後線爆走青田波切つて 関口道子
秋立ちぬ白きベッドに横たはり 山田泰造
いざ行かむラジオ体操茄子の花 菅澤俊典
ねぢり花五七五に挑む子ら 大畠 薫
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