隗作品抄 大山雅由選
獺祭忌傷みし辞書を捨てきれず 森井和子
秋澄むや星を入れたる星の枡 関口道子
新米を送る仕事の小半日 小川マキ
群青の岩絵具溶く渡り鳥 荒井和子
抜糸すむ富士外輪山の霧も晴れ 山田泰造
新走上手に生くる笑顔かな 佐山 勲
松虫草雲の上なる御泉水 山本力也
敬老日ワインに浮かぶコルク屑 河合良三
蛇笏忌の空や四方山音幽か 長井 清
庄内に霙降る夜の産の声 青柳明子
干柿の届く家郷の色をして 矢畑昌子
ごぜ宿の木札にしむる秋の声 和田久美子
あはあはと卒寿も近し万年青の実 内山玲子
夫の忌の晴れて小鳥の来る日かな 須賀智子
秋水やゆつくり下るつづら折 飯島千枝子
描き終えて安堵の息吹良夜かな 猪口鈴枝
片意地も生きるすべなりとろろ汁 山本武子
笑はせて病に触れず実南天 宮崎晴子
烏瓜夕陽の赤を吸ひ尽くす 菅澤俊典
山霧や豆腐のうまき一軒家 石附法子
|
|