隗作品抄 大山雅由選
初雪へ太鼓響けり聾学校 宮武佳枝
重きことみな軽く言ふ開戦日 内山直之
波郷忌や川越えてゆく草の絮 関口道子
乾鮭の簾吹抜く風の息 長井 清
寒雷に眠れぬ夜半は母思ふ 笠原トヨ
雪掻や隣りは北の人らしき 岩本晴子
声あげて泣けぬ齢や冬銀河 田中みどり
あてどなく万歩目指せる枯野かな 加藤一帆
憂きことはおでん煮上がるまでのこと 小山洋子
田作りの焙烙番となりにけり 大畠 薫
ショールたたむ夢ひそやかにしのばせて 上田公子
時雨るるや州浜の石の生きかへり 飯島千枝子
暁寒しあばらの骨の軋しみたり 黒川清虚
年の瀬や爪に包丁の試し傷 山本力也
白息も揃ひてをりぬ結ひ普請 きょうたけを
湯気立てて薬缶の鳴れり冬の駅 内田 粛
冬満月きらめき返す近江の海 榎 和歌
老衰の猫の骨壺冬の星 和田久美子
どなたかと母に問はるる雪 篠原悠子
冬日射す玻璃戸にうすきバナナ虫 森田京子
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