隗作品抄 大山雅由選
ばんどりに編込む緋色春を待つ 篠原悠子
かたくりや並べ干さるるトーシューズ 上田公子
雪降り来授業の子らの遠眼差し 玉井信子
春泥を飛び飛び帰る弓袋 きょうたけを
葛湯吹く母の隣に居るごとく 須賀智子
今にしてこの為体蛙の目 岩本晴子
籠り居る日はゆるやかに干菜炊く 小山洋子
春寒くトマトスープをなみなみと 斎藤八重
鬼やらひ出口をさがす智慧もなく 和田久美子
海苔食めば隠岐の岩の香たつきの香 河合すえこ
咲きて落つ椿に海のひかりづめ 榎 和歌
ランドセル雛に飾る子母は亡く 猪口鈴枝
風花の街をたゞよふアルトかな 長井 清
春寒し赤きネクタイ締めてみし 河井良三
まんさくの花の烟らふ雨上り 飯島千枝子
父の名で母の荷づくり越の鮹 小川マキ
その人はぬつと現はるぼたん雪 崎啓子
蒲団みな越の山河へ広げ干す 山本武子
河豚鍋の二人にあまり子の遠し 丘 舜風子
水温むペンキ屋の刷毛縦横に 宮崎晴子
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