隗作品抄 大山雅由選
陽炎やきつちり結ぶ靴の紐 関口道子
よき人と言はれて暮らすふきのたう 長井 清
ダンデイな人の影ふむ四月馬鹿 内山玲子
畑打ちのへつぴり腰のわれらかな 河井良三
薄紙に唇透けて雛納め 荒井和子
春ショール子のそつ気なさそれもまた 森田京子
花見まで生きると齢八十九 村井幸子
遠来の友をもてなす初音かな 佐山 勲
教室に戻り来し子の春つれて 玉井信子
滑らかに手話の指先雪解光 青柳明子
はこべらをうたひはこべら毟りとる 細見逍子
病む人に見透かす力鳥雲に 和田久美子
春禽や覚むるに間ある岳樺 篠原悠子
花筵もうつまむもの何もなし きょうたけを
霾や色なき街は水の底 須賀智子
老い初めしよりの安らぎ花菫 榎 和歌
青空につんつん立ちの辛夷かな 大畠正子
花冷えの厚き手のひら搾乳婦 早川まさ
縮緬は母の匂ひや吊し雛 山本武子
落椿もの憂き朝は掃かずおく 宮崎晴子
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