隗作品抄 大山雅由選
古希近し聴かせたまへや亀鳴くを 長井 清
春一番蟇玄関へ歩ましむ 井上 睦
春の日や栞はさむる源義の書 山内直之
葦焼くや焔の猛る水の上 山本武子
柿若葉活字大きな書を選ぶ 宮崎晴子
バラの卓顔逆さまに銀の匙 斉藤八重
ひとりよりやつぱり二人花菜粥 榎 和歌
鍬持てる腕の細き西行忌 山田泰造
ひとひらを追ふふたひらや花篝 菅澤俊典
めぐすりの頬をながれて春夕べ 石附法子
残雪の穢を濃くしたり父の庭 篠原悠子
太巻を一本買ひぬ修司の忌 きょうたけを
草朧けふは水辺の道をとり 飯島千枝子
調律の音の無機質春暑し 森田京子
桐の花けぶる高さの故郷かな 上田公子
釣り大会集合場所の大桜 小川マキ
図書館のいつもの席の春帽子 荒井和子
ひなげしや子の大好きな鬼ごつこ 崎啓子
洋館の白き列柱新樹光 平山みどり
蚕豆の剥けば小鉢を満たすほど 富岡美和
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