隗作品抄 大山雅由選
語り継ぐ漫画もありき終戦日 小山洋子
越の田も貫く河も虹の下 長井 清
遠花火ふつと盗られし胸のうち 上田公子
子ら七人冑七匹帰省かな 小川マキ
秋灯下電池の切れし電子辞書 西原瑛子
杖止めて池の涼風懐に 内田研二
なり過ぎの木の疎まるる青榠櫨 斎藤八重
おはぐろや昏きを出でて翳りへと 和田久美子
浮石へ硫気なだるるちんぐるま 篠原悠子
避暑の地や人踏み均すけもの道 細見逍子
十六夜の櫂の音とどく乳児院 きょうたけを
帰り来し子に焼き茄子のひすい色 須賀智子
白木槿百の咲き出で百落ちぬ 内山玲子
本を閉ぢ目を閉ぢ虫の声の中 榎 和歌
音程のずれるもありて蝉時雨 岩本晴子
母に添ふことの難さやかたつむり 飯島千枝子
ちんぐるま咲く山頂の雲迅し 森田京子
またひとり逝きて八月終りけり 山内直之
律儀にも買うてすぐ鳴く籠の虫 平山みどり
新涼や目覚めの息を深く吸ひ 永島正勝
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