隗作品抄 大山雅由選
秋うらら砂丘に野菜研究所 きょうたけを
夜が好きなべて霜月闇の夜は 細見逍子
秋蝶のまき毛の口の日に透けて 須賀智子
木守柿猿の手宙を切りにけり 宮坂明男
鉛筆を削る匂ひや夜の長し 関口道子
秋の夜や哀しきことを詩にして 森山蝶二
行き合ひの雲のまぶしさ飛蝗飛ぶ 飯島千枝子
末枯や眼ぢから強き飛鳥仏 篠原悠子
十三夜夫の泊りは中仙道 村井幸子
母の骨抱きしめて誰も居ぬ冬 西原瑛子
新松子のぞきからくり屈み見る 山本武子
何もかもあるがふるさと柿色づく 森田京子
落葉みな己の影の中に散る 上田公子
みちのくの稲田の露を分け入りぬ 森井和子
月光に大鹿の角輝けり 荒井和子
ちよつぴりと土掘り起こす小春かな 榎 和歌
鳥海山の初冠雪を垣間見に 青柳明子
穭田や日は存分にまどろみぬ 和田久美子
秋深むいまだ解かれぬ母の役 金子律子
日向ぼこ金魚の動きあきもせず 丘 舜風子
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