隗作品抄 大山雅由選
大根引く残る力を試しつつ 髙崎啓子
青年のころの父知り蜜柑むく 玉井信子
東京のなまり懐かし蕪蒸 森山蝶二
氷頭膾忘れし恩を思ひ出し 遠藤真太郎
秋の夜の灯影に揺るるタンゴかな 田中 穣
掌に逝く小鳥のぬくみ小六月 佐山 勲
どぢやう掘る三本鍬を振るひては 山本力也
蜜柑摘夕日を負ひて帰りけり 内田 粛
すでに夜を木枯一番通り抜け 斉藤八重
枯菊や風に応ふる色残し 和田久美子
駆け落ちの相手はをらず海鼠噛む きょうたけを
身削ぐごと去年より薄き日記買ふ 細見逍子
冬蜂の日差し力に石を攀づ 須賀智子
末枯や野に座す石に日のぬくみ 榎 和歌
夕落葉山の天気は明日も晴れ 飯島千枝子
負けん気のさみしさ隠す黒ショール 森田京子
無精髭のばして三日火の恋し 長井 清
文化の日一日限りのカフェギャラリー 村井幸子
枯菊を燃やし尽くしてけふも晴 早川まさ
八十へすこし間のある蕪汁 平山みどり
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