隗作品抄 大山雅由選
顔あげよすぐに花咲く木のあらむ 森井和子
友の手の農を誇りてあたたかし 森田京子
大方は春泥の靴診療所 小山洋子
大波や岩海苔採りの笊流す 山田泰造
かきつばた昔男のいらち癖 細見逍子
透析に若き医師くる四月かな 大畠正子
水草生ふ流れにヤゴの飛び跳ねて 田中 穣
うららかや負けず嫌ひの女弓 安田みつる
雲行にしたがふばかり花菜漬 齋藤八重
求むるものはつかになりて蜆汁 玉井信子
まつすぐにこの世生きたし蜷の道 きょうたけを
出立の餞ならん春疾風 岩本晴子
天地の歪める朝の初音かな 上田公子
げんげ田の花の盛りを飛鳥寺 金子千恵子
追ひかけてくる足音も青き踏む 関口道子
春光や幟の招く高尾山 伊藤俊彦
川の瀬の石跳び渡る梅若忌 菅澤俊典
涅槃雪猫の足跡より融けて 木林万里
雪壁の間を流るる春の雲 高橋長一
春めくやこの日のやうにこれからも 木原正則
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