隗作品抄 大山雅由選
新米の荷に書き足して処世訓 関口道子
新涼や厨にひびく電子音 髙崎啓子
虫去りて耳鳴りばかり夜長かな 高橋長一
点滴に聴力戻る遠花火 佐山 勲
零余子飯出てより会話弾みけり 平山みどり
地震あとのもぬけのからを秋簾 金子千恵子
無患子の寺の波郷を訪ひにけり 河合すえこ
騎馬戦の女の子の強し天高し 荒井和子
知床に着くや流星きりもなし 吉澤銚子
秋の夜や何か書かねば手のさみし 渡辺らん
糸瓜棚世間は割と広きもの 逸見 貴
大花野駆くるはたちのスニーカー 浜野長衛
新顔の川石ひとつ秋彼岸 斎藤八重
三十八度線枯桑の奥にあり きょうたけを
十六夜やいよいよ励む鼓の音 内山玲子
しろがねの羽を落して小鳥来る 須賀智子
赤とんぼ一つとまれば一つ翔つ 榎 和歌
虫喰の着物いとほし日の短か 岩本晴子
太郎冠者まろぶが如く子蟷螂 長井 清
稲架かけて里に夕べの祈り満つ 上田公子
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