隗作品抄 大山雅由選
着ぶくれて我と思へぬ己が影 佐山 勲
潮騒の闇近くあり干菜風呂 渡辺らん
薬喰なりと僧正人喰ふ 長井 清
待春のセロの奏でるセレナーデ 榎 和歌
ふるさとは日溜多し寒雀 髙崎啓子
ひとり居の鬼も呼びたき節分会 平山みどり
大寒の大鍋洗ふ修行僧 吉澤銚子
寒卵里のお札も籾の中 中村 格
口紅をうつすらさして卒業す 荒井和子
八十の夫婦の搗きし餅大小 村井幸子
虎落笛負けて果てたる腕相撲 山本武子
寒の入りとほく汽笛のほそる夜 森山蝶二
湯たんぽやじんわり温き為人 岩本晴子
息すこし漏るる土笛春隣 篠原悠子
狐火のちらり影絵の山の鼻 細見逍子
まづ鍋を囲みて始む初句会 森田京子
尾根までを乾ききつたる落葉道 飯島千枝子
春めくや靴の試着に小半時 玉井信子
寒卵このごろすこし聞き上手 西原瑛子
悴みてちよぼちよぼと顔洗ひけり 河井良三
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