隗作品抄 大山雅由選
ひたすらにただ歩きたる西行忌 羽鳥洋子
見つけたり秘仏に似たる蕗の薹 金子律子
海苔干せる一村碑残すのみ 永島正勝
春光や田のまだ白き越の里 小形周子
春雨や町の本屋は小さくて 金田典子
薄氷やほんのり紅き梅林 河井良三
白木蓮見上ぐる首を撫でにけり 森 廣子
春来たり除染工程回覧板 玉井信子
冴返る豆腐料理の潤み椀 荒井和子
流氷の雲より遅き歩みかな 逸見 貴
蠟梅やもの書かぬ日の文机 渡辺らん
ふる里の邑に一筋雪解川 森井和子
料峭の子規庵に踏む古畳 平山みどり
公魚のテント村あり地震の湖 小川マキ
つづら折り登れば春の海に富士 村井幸子
藪漕ぎの末に掘りたる山の独活 山本力也
はや花菜学び舎望む丸時計 菅澤俊典
雛の燭グラスの火酒の揺れあへり 佐藤禮子
山あひの朱の鉄橋や名残雪 梅田知子
春めくや野川の風に身をさらし 木原正則
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