隗作品抄 大山雅由選
紫陽花や嘘に触れれば色移る 菅澤俊典
青春の付箋そのまま曝書かな 大畠 薫
愛も死も地球の瑣事や夏の雲 細見逍子
朱鷺立ちて島に萱草咲きはじむ 猪口鈴枝
薫風や体育教師の声高し 吉澤真由美
生き行けと兄の声なほ沖縄忌 横山多加子
瑞山や含める桑の実の甘し 玉井信子
大空へ鋏あげたる蟹を買ふ きょうたけを
クレヨンの匂ふ自画像昭和の日 岡本京子
仔馬立つ岬の端に難破船 山田泰造
打ち返す竿のきらめき夏岬 石附法子
大鼓の打の速くなる火取虫 青柳明子
ほほづきや幼馴染は朴念仁 岩本晴子
蛇出づる世につまづきのあるごとく 森田京子
さう背伸びせずともよろし水中花 須賀智子
ひとにぎりほどの辣韭漬けにけり 西原瑛子
緑蔭や肌透きとほるエトランゼ 上田公子
子も出でてぽんぽん梨の授粉かな 山本武子
苞にする切子に灌ぐ梅酒かな 稲辺 栄
吊橋をゆらして渡る夕焼かな 儀賀洋子
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