隗作品抄 大山雅由選
目も口も鼻に集めて夏蜜柑 山口文美
足ひとつ浮かせて象や南風 渡辺らん
立葵鯨の戒名祀りをり 永島正勝
死ぬること知らずに逝きぬ時鳥 遠藤 忍
初蝉とただの二文字日記帳 山内直之
窯口のあがる火の手や明易し 肥田木利子
雨の午後教材の蟇三度鳴き 山田泰造
月赤き夜をなめくぢりてらてらす 内山玲子
ぼうたんの根付きて九年八つ咲く 佐山 勲
梅雨出水いく度堪へて老いにけり 長井 清
梅雨寒し母といふ名の敵のゐて 飯島千枝子
血縁のときにうとまし栗の花 上田公子
子の目には狸見ゆると夏の夜 西原瑛子
橋過ぎるころには暮れて桐の花 篠原悠子
百合香る遺品の句帳そつと開け 大畠 薫
心音に重なる祭太鼓かな 青柳明子
気がかりは母の一分捩花 岩本晴子
白木槿やさしき傷みありにけり 榎 和歌
梅雨寒やあやとりの本借りてくる 和田久美子
片白草淡し午後より風の出て 須賀智子
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