隗作品抄 大山雅由選
長き夜の昭和をおもふよわりかな 長井 清
牛追ひの大声響く秋夕焼 内田研二
魚偏のつかぬ魚食ふ九月尽 きょうたけを
あはだち草身から出た錆もてあまし 細見逍子
穴惑見てより少し気弱なる 榎 和歌
日盛や自力で立てぬぬひぐるみ 金田典子
呼鈴や跳ねたる鮎が玄関に 河井良三
ハトロン紙知らぬ店員文化の日 和田久美子
大曼荼羅描ききつたる秋の蜘蛛 篠原悠子
熔岩原や金剛杖の影涼し 飯島千枝子
涼風や巣立ちの小鳥膝の上 佐山 勲
賑やかに闇に人をり流星 清原伸江
呼びにくるまでは蜻蛉とあるばかり 岩田 桂
旅ひと夜町に別れの遠花火 上田公子
みちのくの海に向ひて門火焚く 森井和子
よろづ神おろがみ食すや越の早稲 小山洋子
老境をゆさぶる山の大花火 髙崎啓子
桃好きの子は遠くして雲仰ぐ 丘 舜風子
蓑虫や誰とも話したくなくて 平山みどり
流灯の名残つきなき流れかな 吉澤銚子
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