隗作品抄 大山雅由選
聖夜劇出番違へる羊の子 森井和子
冬怒濤見てより生気甦り 玉井信子
小春日のこの遠耳の生返事 肥田木利子
蛇口より汲む若水のほとばしり 黒川清虚
夜も更けて猫と毛布を分かち合ふ 富岡美和
あんぽ柿はるかに島の見え隠れ 猪口鈴枝
通ひ夫いささかなれて冬至かな 大畠 薫
晝も夜もひたすら手紙書く師走 西原瑛子
灯を消すやにはかに寒き紙の音 篠原悠子
昨夜の雨葉末に止め冬牡丹 森田京子
鰤起し佐渡あかるみて止みにける 岩田 桂
律儀なるをとこの年賀あなかしこ 小山洋子
大晦日鳥の汚せる畳拭く 佐山 勲
みかん剥く夫の寝息を確かめて 小川マキ
さざなみの綺羅より現るるかいつぶり 山本武子
鯛焼の餡の熱さのとび出して 吉沢まゆみ
夕月を仰ぎ了りぬ冬構 須賀智子
潮騒を玻璃に聞きをる柚子湯かな 渡辺らん
葱下げて暮色にどつと囲まるる 上田公子
膝掛にほのかに残るパイプの香 内山玲子
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