隗作品抄
堅香子の切先揃ふ三鬼の忌 森田京子
水飲んでゐる卒業の日の蛇口 岩田 桂
朧夜や鏡の前のひとりごと 儀賀洋子
春の園いたづら象が水降らす 鴫谷良雄
花辛夷目がけて山を降りにけり 山本力也
鷹鳩と化して年金暮しなる 平山みどり
エンディングノート進まず目借時 黒川清虚
春疾風吹き荒るる日や余震なほ 江向洋子
樟若葉廃校いまだ諾へず 中村 格
会釈されさて誰だつたつけ葱坊主 河合良三
よなぐもり心にも無き嘘をつき 山本武子
ふららこの遊ぶ子待ちて軋むかな 木原正則
ままごとの土筆しなびて小半日 逸見 貴
教へ子と言ふ恥づかしさ葱坊主 山田泰造
良き人にならんと甘茶灌ぎたる 玉井信子
霾や駱駝は西を向きしまま 森井和子
新しき雪駄に苗木市の雨 きょうたけを
工事夫の旗振り子猫横断中 猪口鈴枝
春耕す去年の夫を見習うて 小川マキ
かたばみや梃子摺るものの憎からず 田中 穣
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