隗作品抄
故郷へ届け白雲朴の花 髙﨑啓子
明易や木綿のシャツの肌ざはり 岩本晴子
更衣白きに秘するものありて 細見逍子
ゆく末をなんじやもんじやの花に問ふ 須賀智子
授業中どこか遠い目梅雨明け後 川戸直美
青胡桃岩波文庫手にとらず 板谷文木
あぢさゐの森に入りて小人めき 山口文美
ちやんばらのまくなぎ相手きりもなや 平野和士
実家といふものすでになし豆ご飯 飯島千枝子
昼顔や十七人の住む島に 永島正勝
身の憂きを波に任せる海月かな 遠藤 忍
比叡よりの水すずやかに朴の散る 篠原悠子
夏空へ吹けサキソフォンうなひ髪 玉井信子
麦秋や塩を効かせて魚を焼く きょうたけを
あぢさゐの藍極まりて妻帰る 佐山 勲
去年までは夫の領分草を引く 小川マキ
梅雨晴間島の男の黒光り 村井幸子
牡丹咲く二十七花や一株に 鴫谷良雄
たいそうなことできなくて金魚玉 水本ゆき代
奥阿賀の朱き小鉢に木の芽和 岡本京子
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