隗作品抄
走り梅雨蛇笏の里の通し鴨 田中 穣
芭蕉玉解きて小蝦の跳ぬる音 玉井信子
まなうらに持ちて帰らむ螢の火 森田京子
老いてなほ羽化するつもり更衣 内山玲子
領巾を振る別れは遠し花菖蒲 須賀智子
涼しさや入江に七つ星確か 永島正勝
新盆や職業欄は未亡人 遠藤真太郎
何時よりか胸に棲む人遠花火 上田公子
明易しソドムの街は鎮まらず 山内直之
ほうほうほたる呼んでみただけ螢 岩田 桂
青葉木菟聞きて弱気になつてをり 榎 和歌
降り足りて樹々の太りぬ祭笛 渡辺らん
一人居の客にもなりて夜の蟻 猪口鈴枝
晩夏光砂にまぎれし貝の殻 細見逍子
引く波を手鉤に追ひて昆布採 篠原悠子
朝蝉のミッションミッション急かしけり 西原瑛子
山の風すいと受け取る糸とんぼ 荒井和子
黙祷の一分永し蝉時雨 梅田知子
茄子漬やひとつ覚えの塩加減 岩本晴子
日盛や気合入るとき空低し 山本武子
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