金魚にあまり興味のない人の多くは、和金の名前すら知らないが(多くの人は和金を「普通の金魚」と呼ぶ)出目金を知らない人はまずいない。日本人の誰もが知っている金魚、それが出目金である。金魚が中国から日本に渡ってきたのは今から500年以上前の室町時代のことであるが、出目金が日本に紹介されたのは意外に新しく、明治28年のことで、中国広東産のものをアメリカへ輸送の途中、船が横浜へ入港したとき、買い取って飼育したのがはじまりであるといわれている。中国では16世紀には既に品種として固定されていて、大衆魚として親しまれていた出目金が、日本に輸入されたのがどうしてこんなに遅かったのかは分からないが、当時の日本人には金魚はあくまでも可愛らしい、優美なものが好まれていて、変わったものはもてはやされなかったのかもしれない。それは現在においても中国金魚は奇抜な品種が次々と作られているのに対して、日本ではそれほど多くの品種は作られず、新たに作出される品種も優美なものが多いという事実とも無関係ではない気がする。以前は出目金といえば黒出目金、キャリコ出目金、赤出目金位しか見かけなかったが、最近は蝶尾やアルビノ等、バラエティに富んだ種類が見られるようになった。しかしその反面、昔ながらの国産の出目金は以前より上質の魚が見られなくなったのは残念である。私が上物の黒出目金の親魚を初めて見たのは札幌の東急デパート屋上の観賞魚売場で、60cm水槽に琉金、オランダ獅子頭と一緒に泳いでいたのだが、当時はまだ小学2年生で、金魚を飼い始めたばかりで良し悪しなどたいして分かるはずなどないのに、とにかくサイズ以上に圧倒的な存在感で、時の経つのも忘れて何時間も食い入るように見ていたことを覚えている。琉金の女性的な美しさに対して、出目金の美しさは男性的な美しさといえるような気がする。自分だけの感覚かもしれないけれど、上質の親出目金(特に黒出目金)は理屈抜きに格好良くて、他の種類に混じって1匹泳いでいるだけでも抜群の存在感を示してくれる。

・理想の出目金とは

出目金は極めて大衆的な金魚であるが、本当に質の良い出目金というのは探してみるとなかなかいないものである。ここでは今までほとんど取り上げられることがなかった理想の出目金について書いていきたいと思う。故長沢兵次郎氏によると、理想の出目金とは概ね次のようなものである。

1.体型は頭部はやや小ぶりで目と目の間が狭く感じるほど目が発達していて、眼径は丸く大きく、左右の眼球が揃って真横を向き、雄大に突きだしているものが良い。

2.魚体は琉金と比較して体高はやや低く、丸みをもち、両腹が均衡を保っていて、やや長めに感じる位のスマートさを持ち、各鰭もやや長めで癖がなく延びているもの。

3.尾筒は太くしっかりとして、四つ尾のものが特に良い。尾芯は上葉の中心部をまっすぐ通り、上葉は尾芯から適度な深さで割れて、やや上を向いて尾幅を持ちながら癖がなく素直に伸びているもの。

4.下葉は、尾肩が丸みを持ちながらやや下の方を向いて豊かに広がった大ぶりの尾鰭を持ったものが良いものとされている。

5.尻鰭は1枚より2枚のものが良い。



・出目金について
・出目金各種

超普及種でありながら、現在では琉金以上に上物の国産出目金に出会うことは難しくなりつつあるようだ。このまま幻の存在になってしまうのか・・・と思っていたら、日本観賞魚フェアで久々に素晴らしい出目金に出会えたのでご紹介したい。

出目金親魚の部優勝魚。親魚の黒出目金には今まで幾度となくお目にかかってきたが、これほど素晴らしい出目金に出会えたのは初めてでであった。丸手の体型に左右対称に良く張り出した大きな目、年齢は4歳以上だと思うが、当歳、2歳魚のように尾がしっかりと張って大変若々しい。銘魚と呼ぶに相応しい出目金である。

出目金2歳魚。確か奈良県知事賞受賞魚だったと思う。丸手の体型に肉厚の尾鰭、深見のある黒が素晴らしい出目金である。可愛らしさよりも、格好良さを感じさせてくれる魚であった。

黒出目金親魚と二歳キャリコ出目金。面白いカットが撮れたので喜んでいたら、横見の画像を撮るのをすっかり忘れてしまった。キャリコ出目金も近年は良魚に出会う機会がめっきり減ってしまったので、久々に出会えて嬉しかった。

つい最近お目にかかったキャリコ出目金の三歳魚。配色のバランス、体型共に申し分なく、見飽きない魚である。現在はキャリコ出目金の呼び名が普通になっているが、昔は三色出目金という呼び方の方が一般的だったような気がする。

キャリコ出目金の中に時折混じっている全透明鱗の魚。本来はハネ魚扱いされてしまう魚ではあるものの、全透明鱗特有の体色に黒目だけが目立つユニークな風貌はとても可愛らしく、充分に鑑賞価値があるといえる。