・江戸錦について

 昭和26年頃、2代目秋山吉五郎氏がらんちゅうと東錦の交雑によって作出に着手し、これを東京府水産試験場水元文場の長沢兵次郎氏が引き継いで、苦心の末に完成させた品種である。江戸錦の作出途中で出現した桜錦のほうが先に優秀魚が出始めたのに比べ、江戸錦のほうはなかなか思うような魚は得られなかったようである。長年に渡り、全国各地の愛好家が良魚作出の為に日夜努力を重ねているらんちゅうでさえも未だに背に帆が立つものが現れるほどであるから、背鰭のある東錦と掛けて、背鰭がなくしかも綺麗な浅葱色が乗ったらんちゅう型の金魚を作出するのがいかに大変な作業であったかが想像できる。体色は東錦と同様、尾鰭に黒い斑点か縞模様がしっかりと入り、浅葱色を主体に明るい赤が適度に入る魚が理想である。上質の魚はまだまだ数が少ないが、上質の国産の江戸錦は何ともいえない粋な感じがして、見ていて飽きない。まさに江戸錦という名前がぴったりで、その魅力を知ったら虜になる人も多いのではないかと思う。今後益々人気が出てきそうな品種である。

国産江戸錦の2歳魚。頭の盛り上がりはやや物足りないが、色彩的にはまずまずの魚である。大きな黒目があどけなさを感じさせて可愛らしい。

同じく国産の江戸錦の2歳魚。墨が多いので重い印象を受けるが、体型まずまずの魚である。横見よりも上見の方が魅力的に見えるかもしれない。

中国産の江戸錦。独特の色彩は好みが分かれるところだが、大きさはとにかく圧巻である。25〜30cm近くあるのではないだろうか。国産の江戸錦では、ここまでのサイズのものはなかなかお目にかかれないだろう。