・地金について

 地金は古くから主に愛知県の名古屋で飼育されてきた日本固有の金魚で、昭和33年に愛知県の天然記念物に指定された品種である。口先、背鰭、胸鰭、腹鰭、舵鰭、尾鰭の6ヶ所が赤いのが特徴であるが、生まれつきこのような模様をしているのではなく、色変わり前に鱗を取る独特の技術(調色という)によってこのような美しい模様が作り出される。「地金」というのは本来「その地方特産の金魚」という意味で、島根県ではなんきん、高知県では土佐金がそれぞれ地金になるのだが、何故名古屋の地金だけが「地金」と呼ばれるようになったのかははっきりしない。また、同じ地金でも四つ尾ジキン、しゃち、クジャク尾、地王など、体型の微妙な変異や特徴により、呼称が変遷してきた歴史があるといわれている。今日では大きく分けて尾張地方の型と三河地方の型に分けられている。その特徴を正確に把握することは難しいが、大雑把に言うと、尾張地方の型は一口に言って笹の葉のような細いすらりとした型で、三河地方の型は熊笹のような寸の詰まったがっしりとした型であるといわれている。私もそれほど詳しくないので、正確ではないかもしれないが、四つ尾の地金と呼ばれているタイプが胴の詰まった三河地方の体型の魚で、六鱗と呼ばれているタイプが尾張地方の笹の葉型の体型をしているように思われる。この魚は私が金魚を飼い始めて間もない頃から、大抵のデパートの観賞魚売場に行けば結構な確率でその姿を見ることが出来たものだが、どういうわけかいつも1〜2匹しか泳いでおらず、しかもどこの店でも水槽で展示されていたため、長い間その魅力が今一つ分からなかった。しかし、それから何年も経った後、大和郡山の養魚場に行った際に群れで泳いでいる地金を見てイメージが一新した。あの四つ尾の尾鰭を可愛らしく揺すりながら前に進んでは少し戻って尾を開く姿は、沢山の赤い花が揺れているようで見ていて飽きないのである。飼育が難しいイメージが先行している感があるが(実際難しいのだが)興味のある方は是非一度飼育してみて頂きたいと思う。まさに「日本の美」を感じさせてくれる素晴らしい品種である。

・飼育方法及び鑑賞のポイント
1.体型はやや詰まり気味で窮屈に見せず、太みのあるものが良い。

2.各鰭が赤く口紅は小さく上品についていること。

3.尾筒の太みが無いもの。腹部が出て腰の部分で急に細くなっているものをがんばらといって、下品であるうえ狂いが出やすいので良くない。

4.背なりはゆるやかな角度の浅い櫛形で、腹部の線は豊かな丸みを持つ船底型で、体高が充分あるもの。

5.他品種でも舵鰭は2枚のものが望ましいが、地金に限っては舵鰭は必ず2枚でなくてはならず、不揃いのものや、間が開いたもの。尾鰭の外に出ているものは不良魚とされる。最も良い型は、2枚の尾鰭の先が手を合わせたように1枚のように見せる、所謂拝み舵の型で、次いで2枚が平行に出ているものが良い。

6.左右の上下葉は垂直に近いほど良く、前方に傾くものを蠅はたき、後方に傾くものを背負うといって嫌われる。

7.地金を側面から見た場合、上葉と下葉の中間のくびれた部分を中じめといい、この度合いが中庸を得ていること。

8.尾は適度な柔らかさを持ち、遊泳時に尾鰭をしぼる時に、下葉の先端が軽く触れ合うことが重要で、これをほふ(破風)が合うという。

9.尾鰭は当歳時には必ず先端まで赤くなければならない。2歳魚以降は若干白くなっても構わないが、軟条の間まで縦に白くなるものは良くない。

地金の鑑識は難しいが、ここでは一般的な見方について幾つか挙げておきたい。

・飼育方法について

 わざわざ項目を設けて書く程の内容ではないが、購入後の管理の要領が分からず、すぐに死なせてしまう人が多いので、少しだけ購入後の管理について触れておきたい。地金は土佐金、出雲なんきんとは違って、基本的に青水で飼育しなければならない魚なので、更水飼育は厳禁である。新しく地金を購入したら、袋の中も水を小さな洗面器等に入れて、そこに新しい水を数日かけて少しずつ足していくようにすれば、体調を崩す危険が少なくなると思うので、何度飼育に挑戦してもうまくいかないという方は、是非試してみて頂きたいと思う。尚、出雲なんきん、土佐金の場合も購入直後は同様の方法が有効である。ただ、あくまでも袋の中の水が綺麗な水で、魚も至って元気であることが条件である。

地金の明け2歳魚。背鰭に赤が入っていないので基準から外れてしまう魚であるが、尾形が良いので上見で結構楽しめる魚。