・オランダ獅子頭について

 数多くの品種の中でも、水槽で鑑賞して最も見栄えがする品種、それがオランダ獅子頭である。この品種の歴史は古く、寛政12年(1800年)に刊行された長崎聞見録では「獅子頭金魚・此の金魚は頭、獅子に似るを以て名づく、稀なる明魚にてこの価も他の魚の百倍せり、長崎にたしなみもつ人ままあり、面白き魚之」と紹介されているようである。オランダ獅子頭の名称の由来は、オランダから運ばれてきたとする説と、江戸時代には外国渡りの珍しいものを、何でも「オランダ」と付けたので、「オランダ」に特別の意味はないとする説があるようだが、当時オランダから日本へ金魚が渡ってきたとは考えにくく、今日では後者の説が有力である。私がこの品種を初めて見たのは札幌の東急デパート屋上の観賞魚売場で、60cm水槽に15cm位の三歳魚が数匹、ゆったりと泳いでいた。それまで小さな琉金や出目金、コメット等を飼育していた私にとっては高値の華でとても手が出なかったが、とにかくその豪華さに圧倒された記憶がある。水槽飼育では長手よりも丸手の金魚が見栄えがする場合が多いが、オランダ獅子頭の場合は長手の方がより一層豪華に見え、スケールの大きい迫力のある美しさを見せてくれる。

・理想のオランダ獅子頭とは

らんちゅうと東錦は古くから関東で盛んに飼育されてきた品種だが、このオランダ獅子頭は主に関西地方で飼育されてきたもので、関西地方ではオランダ獅子頭の品評会が開催されるなど優秀な魚が数多く見られるようである。体型は東錦とほぼ同じで、鑑賞のポイントとしては次のようなものが挙げられる。

1.肉瘤は頬から頭にかけて盛り上がっているもので、文字通り獅子わかぶったように良く発達した獅子頭型のものが良く、小さい玉が重なり合ったように発達したものが特に美しい。

2.体型は、体高を充分に持ちながら体高に比較して体型は長めに感じる位のバランスを保ち、太みを充分にあって色艶が良いもの。

3.尾鰭は尾芯の部分から適度に割れて癖がなく、やや上を向いて尾幅が充分にあるもの。

4.尾付けは深く、尾肩は腹部の後方を包み込むように丸みをもって張り、尾張りの良い所謂フサ尾と呼ばれる型が最も美しい。


・オランダ各種

長手の体型にフサ尾というオランダ獅子頭の見本のような魚。赤味の強い魚よりも、この個体のように橙黄色の個体の方が体型的に優れた個体が多い。(松井佳一著「金魚」より)

上の個体よりもやや胴が詰まったタイプの魚。尾の張り、頭の盛り上がり共に素晴らしい魚である。(松井佳一著「金魚と錦鯉」より)

中国産の変わりオランダ。色彩的にやや不安定な印象を受けるが、上見で鑑賞すると大変綺麗な魚である。

弥富産のオランダ。昭和30年代以降、水槽飼育で横見の鑑賞が一般的になるにつれて、長手よりも丸手のオランダが好まれるようになった。鮮やかな赤にこぼれ落ちそうなほど発達した肉瘤が魅力的な魚である。

茶色の体色に頭だけが赤い、中国産の新品種。まだ品質にはバラツキがある印象だが、こういった魚を次々と作出できる中国の品種改良の技術には驚かされる。