・丹頂について

 今日では出目金、琉金と共に広く一般愛好家に人気の高い品種であるが、日本での歴史は意外なほど浅く、昭和30年代に入ってようやく中国から輸入された。「丹頂」の名のとおり頭頂部のみ赤色で、体色は白一色で覆われている。体型はオランダ獅子頭に良く似ており、体型はやや長手で各鰭は長めで尾鰭は4つ尾のものがほとんどである。オランダ獅子頭とほぼ同じ体型ではあるが趣はだいぶ違っていて、オランダ獅子頭が豪華で男性的な印象を受けるのに対し、丹頂は清楚で女性的な感じのする品種である。頭頂部のみ赤で体が白という体色のためか、画一的な印象を受けがちなところはあるが、完成された親魚の美しさは他の品種と比べても決して見劣りしない、素晴らしいものである。

・理想の丹頂とは

 丹頂は広く一般に愛好されている品種にもかかわらず、詳しく書かれている本は全くと言ってよいほどない状態なので、ここでは私なりに理想の丹頂について書いてみたいと思う。最近(といっても20年ほど前からだが)中国から輸入されてくる丹頂は、国産の丹頂に比べると長手で頭の盛り上がりが良く、見応えのある魚が多い。これはこれで魅力的なのだが、それ以前の、国産で上質の丹頂を知っている私としては、中国産の丹頂はどうしても物足りなさを感じてしまう。私が初めて上質の丹頂を見たのは昭和58年頃、札幌の丸井デパートの屋上にあった観賞魚売場(みどりと滝の広場 平成13年閉店)であった。札幌の観賞魚売場としては珍しく、水槽以外に上見で鑑賞出来るプラ船が多く置かれていた。丁度、池袋西武デパートの観賞魚売場にちょっと似た感じの売場だったように思う。その船の一つに上質の丹頂(多分2歳魚)がいたのだが、当時よりも遙かに目が肥えている今でも釘付けになりそうな程、素晴らしい丹頂だった。体型は弥富産のオランダ獅子頭をもう少し丸手にしたような体型で、中国産の丹頂よりも骨太で、引き締まった体つきをしていた。体色はやや飴色がかった白で、頭は中国産に比べて固いが、赤味が強く、肉瘤の粒が小さく頭頂部の赤は丸みを帯びていて、顔立ちも何ともいえず可愛らしく上品だったことが今でも強く印象に残っている。生産者にとっても、安価で見応えのある丹頂が沢山輸入されている現在では、国産の上物の丹頂を作るメリットはないのかもしれないが、出来ることなら今一度、あの当時のような素晴らしい丹頂を見たいものである。

昔の金魚屋さんに必ずと言って良いほど置かれていた金魚の小冊子に乗っていた丹頂。飼育歴の長い愛好家の方の中には見覚えのある方もいらっしゃると思う。頭の上がり方は中国産よりも小さいが、全体のバランスが良くとても優雅である。この個体ほどではないにしろ、昔ながらの国産の丹頂にはこういったバランスの良い日本人好みの個体が多かった。

こちらは中国産の丹頂。国産の丹頂に比べると頭の盛り上がりが顕著で、四角い形をしている。
(Johnson/Hess著 2001年発行 Fancy Goldfishより)

・丹頂今昔

紅頭と呼ばれる背鰭のないタイプの丹頂。現在では全く見かけないが、かつては中国から輸入されていたようである。昔の中国の切手にも同型のものが紹介されている。(フィッシュマガジン1970年6月号より)

現在では滅多に見られなくなった国産の丸手の丹頂。頭の上がりは中国産のものよりも小さいが、赤身が強く、丹頂と呼ぶに相応しい魚である。顔立ちも上品で可愛らしい。

国産丹頂上見。