・和金について

 金魚にほとんど興味のない人でも、一度位はお祭りの金魚すくいで和金を掬ったことがあるのではないだろうか。金魚すくいの花形でもある和金は、小赤と呼ばれて大型熱帯魚の餌にされていることもあり、気安く扱われてしまいがちだが、同時に夏の風物詩として欠かせない存在でもある。私自身も、初めて飼育した金魚は小赤だった。昔ながらの小さな金魚鉢に5匹も入れて(当時はエアーポンプの存在すら知らなかった)飼っていたが、次々と死なせては懲りもせずまた買い足していた記憶がある。死なせてしまった金魚達には随分かわいそうな思いをさせてしまったが、思えばこの時の失敗が、金魚にのめり込むきっかけになった気がする。和金は文亀2年(1562年)に中国から初めてもたらされた。最初は単に「金魚」と呼ばれてたようだが、後に他の品種が中国から渡来し始めたので、それらと区別する必要から、古くから日本にいた金魚という意味で、日本の異称である和(倭)を取って和金と呼ばれるようになったといわれている。和金がいつから「わきん」と呼ばれるようになったのかははっきりしないが、最も古い資料では文化13年(1810年)に発行された「蔵六庵金魚飼養」が最初である。これほどの長い歴史がありながら、安価であるが故に不本意な扱いを受けがちな和金だが、最近では一部の愛好家の間で和金の良さが見直されてきているのは嬉しい限りである。特に大型で更紗模様をもつ和金は池で飼育すると大変見栄えがして、小型の錦鯉と比べても決して見劣りしない美しさを見せてくれる。

・理想の和金とは

 室町時代に初めて中国からもたらされた時、コガネウオとも呼ばれていた和金は、当時の日本人にとっては黄金色の魚というだけで、充分に驚きだったに違いない。しかしその後数多くの金魚が渡って来るようになって、今日ではすっかり当たり前の存在になってしまった品種なので、今更和金なんか、と思う人も多いかもしれない。しかしどういう形にしろ、日本に入ってきてから500年以上も日本人の身近にいるということは、それだけ支持されていることの裏返しであるともいえると思う。存在自体が当たり前すぎるが故にその美しさはとかく見逃しがちであるが、和金の美しさも決して捨てたものではない。以下に、理想の和金について書いていきたいと思う。


1.頭部や目幅はやや狭く、目先があって吻端は尖っているものが良い。

2.尾筒は太くしっかりとしていて上葉、下葉共に癖がなく伸びて上見では左右均衡を保っていること。尾芯は真っ直ぐ通り、尾皿に食い込んではいけない。

3.魚体は横見ではやや丸みを帯びていて、締まりがあり色艶が良いこと。

4.尻鰭は2枚のものが良い。

5.更紗模様のものは赤勝ちで左右バランス良く細かく模様が入り、腹部の方まで赤が入り、各鰭に赤い模様が入ったものが美しい。

更紗和金。水槽で横から鑑賞しても充分美しいのだが、鮮やかな赤と抜けるような白は錦鯉の美しさに近く、上見のほうがより一層楽しめると思う。和金の美しさを再認識させてくれる魚である。

第23回日本観賞魚フェア和金親魚の部優勝魚。まさに和金の見本と言って良い素晴らしい魚である。

金魚すくいでお馴染みの小赤。多くの方がそうであったように、私の金魚との付き合いもこの小赤から始まった。そういう意味で、大変思い出深い魚である。