● エロス 



神々の中で一番美しい愛の神



● エロスとプシュケ 〈愛の神を裏切った娘〉 ●


ある国の王には3人の美しい娘がいました。
この娘達は皆美しいのですが、末の娘のプシュケの美しさはあまりにすばらしく、人々に美の女神のようにあつかわれるようになり、そのことが美の女神アフロディテの怒りをかうことになってしまいました。


アフロディテはエロスにこういいます。
「あの、忌々しいプシュケとかいう娘を世界一下賤な男に恋いこがれるようにしておくれ」

エロスはアフロディテの頼みを実行しようとプシュケのもとに行きますが、プシュケのあまりの美しさに目を奪われてしまい、間違って自分の矢で自分を傷つけてしまいました。
エロスの矢は恋心をかりたてる力があります。
エロスはアフロディテが愛しくてしょうがなくなってしまいました。


一方プシュケの方は、姉たちが幸せな結婚をして行ったのに比べ、プシュケ自身には良い結婚相手が見つかりませんでした。
困ったプシュケの両親はアポロンの神託を聞きに行きます。

「プシュケに花嫁の支度をさせ、高い岩角に置き去りにしなさい。ゼウスでさえ恐れるものが彼女の婿になるのだから」
この神託を聞いたプシュケの両親は嘆き悲しみます。
「なんということなの」
しかし、泣く泣く神託のいうとうりにしました。


プシュケが神託のとおりに岩角にひとりでいると風がプシュケを連れ去り、それは豪華な人の手でつくられたとは思えない宮殿にプシュケを連れて行きました。
プシュケはそこで、姿の見えない召使いたちにそれはすばらしい行き届いた世話をされ過ごします。
そして、夜になると寝台に夫となるものがやってきて優しく抱擁し、語りあうのです。
こうしてプシュケは夢のような暮らしをしました。


プシュケの信託の事を聞いた姉たちがプシュケを心配してプシュケが置き去りにされた岩角にさがしにきました。
そこで、プシュケは渋る夫に無理矢理たのみ、姉たちを招く許可をもらい姉たちを宮殿にまねきます。

しかし、姉たちは、「末の妹だけこんな良い暮らしをしているなんて許せない!」と思い、プシュケを惑わしてしまいます。

「お前の夫はどんな人なの?」姉が聞きます。
「とてもやさしいわ。私をとても愛してくれているの」プシュケは答えます。
「見た目はどうなの?」また姉が聞きます。
「それが見たこと無いのよ。夫にはけして姿を見るなといわれているから」プシュケは正直に答えました。

そんなプシュケに姉たちは、夫が姿をみせないのは大蛇でお前を食べようとしているからだといい、助かるには夫を殺すしかないとプシュケをたぶらかしてしまいます。
そして、プシュケに、夜、見えないようにランプとよく研いだカミソリをしのばしておくように言います。
夫を愛していたプシュケでしたが、姉たちの言うことを信じ、泣く泣くいうとおりにしました。


夜、夫がいつものように来て語らったあと眠りに落ちたあと、プシュケはそっとかくして置いたランプをともし、夫の姿を照らします。
すると、そこにいたのは大蛇などではなく美しい愛の神エロスが寝ている姿でした。
プシュケは夫の美しさにみとれ、誤ってランプの油を一滴エロスの肩の上にたらしてしまいます。
油によってやけどを負ったエロスは飛び起きました。

そして怒ってプシュケにこういいます。
「お前は、こんなにもお前を愛していた夫の言葉よりも、邪な姉たちのことばの方を信じたのだね。姉たちには罰をあたえなくてはいけないけれど、お前には私という夫を失う罰だけをあたえよう」
そう言い残して、泣いてすがるプシュケを置いて去って行ってしまいました。








● エロスとプシュケ 〈苦難のはての幸せ〉 ●


エロスに去られてしまったプシュケは自分の愚かしさを呪い、絶望して河に身を投げてしまいます。
ところがどうでしょう、河の水はプシュケを溺れさせることなく、やさしく草原にプシュケを横たえたのです。
それは、河の神がプシュケがまだエロスに愛されているということを知っていたからでした。

そこに、ちょうど通りかかった牧畜の神パンはプシュケを慰め、けして諦めないで、エロスに許してもらえるように努力するようにプシュケを諭しました。
ここから、プシュケの長い苦難の旅が始まります。



長い旅の末、エロスに会うことの出来なかったプシュケはアフロディテの所に行くことにしました。
アフロディテはただでさえプシュケを疎ましく思っていたのに、エロスの心まで奪いエロスに怪我をさせたということで、その怒りはすさまじいものでした。

その証拠にヘルメスを通じて神々に「プシュケを見つけ、アフロディテに居場所を知らせたものには、アフロディテの唇に触れることが許される」ということを告げて回らせたのです。
麗しいアフロディテにふれることができるということで、男たちが熱狂したのはいうまでもありません。


アフロディテの神殿に行ったプシュケはアフロディテから激しく痛めつけられ、我利雑言を浴びせられました。
しかし、それでもアフロディテの怒りは解けません。

痛めつけられぐったりしているプシュケにアフロディテはいくつもの試練をあたえます。
それはとうてい人が成功できるようなものでは無いものばかりでした。

しかし、プシュケがまだエロスに愛されていることをしっているものたちがコッソリとプシュケに協力をしてくれて、プシュケはなんとかアフロディテのだす試練を乗り越えていきます。

プシュケが試練を乗り越えていくことが面白くないアフロディテは、プシュケにこういいました。
「この小箱を持って死者の国のベルセポネのもとに行き、ベルセポネから美しさを分けてもらっておいで!」

プシュケはなんとか、プシュケを助けようとする助言者の助けで、ベルセポネから美しさを分けてもらえることができました。
しかし、その小箱をアフロディテに届ける途中で、小箱を覗いてしまったのです。
それは「アフロディテ様の試練で私はすっかりみすぼらしくなってしまったわ・・もしエロス様に会えてもこんな私を見ていやになってしまうかもしれない」という思いからでした。
しかし、小箱のなかには眠りが入っており、プシュケは深いねむりに落ちてしまいました。


ちょうどそのとき、火傷の傷が癒えたエロスがプシュケを心配して様子を見に来ました。
するとそこには眠りにとらわれたプシュケ。
エロスはプシュケからすぐに眠りを取り払い、眠りを小箱に戻しました。

「お前はまた、懲りずに失敗をしたんだね。後のことは私が何とかしてあげるから」
そういうと、プシュケを伴いゼウスのところへ行き、結婚の許しをもらいたいと訴えたのです。

ゼウスは直ぐに承知し、アフロディテにもとりなし、エロスとプシュケの婚礼をあげました。
そして、プシュケにネクタルを授け、彼女を不死の女神としたのでした。

こうしてプシュケは不死の女神として、エロスの妻になることが出来たのです。





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