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■ アラブ内紛の調停に乗り出したサウジ国王 最首公司 (2007.2)
 内戦・内紛状態にあるアラブ国はイラクだけではない。パレスチナ、レバノンでも政府軍と民兵組織が住民を巻き込んだ戦闘を繰り広げている。その紛争を収めようと、サウジアラビア・アブドラ国王が調停に乗り出した。パレスチナ関連では対立する2派が9日聖地マッカ(メッカ)で「挙国一致内閣」の合意が得られた。


パレスチナ内紛に和解の場
 2月6日、イスラム教最大の聖地マッカ入りしたパレスチナ自治政府アッバス議長、ハマスの最高指導者でシリア亡命中のメシャル氏、それにハマス出身のハニア首相は「2大聖地(マッカとメディナ)守護者」たるアブドラ国王、スルタン皇太子、サウド外相などサウジ指導部総出の歓迎を受けた。
 パレスチナではイスラエルとの和平交渉をめぐって、アッバス議長率いる世俗主義のファタハとイスラム主義のハマスが対立、武力抗争が頻発している。イスラエルとの和平路線を進むファタハに対して、エジプトのムスリム同胞団の流れを汲むハマスはイスラエルを否定し、ユダヤ人を含むパレスチナ国家を建設すべきだと主張する。パレスチナ住民は1年前の議会選挙でハマスを選び、ハマス主導の政府が成立した。
 ところが、欧米はハマスを忌避してパレスチナへの経済援助を中止、米国などはアバッス議長の護衛部隊に対して860万ドル(約100億円)の経済援助を申し出て、ハマスの孤立化を図っている。
 ファタハとハマスは昨年来、停戦協定を結びながらその翌日には破棄するという事態が4度繰り返され、死者は80人に達した。そこで登場したのが、サウジ・アブドラ国王。1月末に書簡を発し、イスラムの聖地マッカ大聖堂にファタハとハマスの両指導者を招き、首脳会談を用意したのだ。6日からその会談が始まった。その成果は冒頭の通りで、「挙国一致内閣」をつくることで合意された。


レバノン内戦ではイランと連携
 レバノンでは政府軍とイスラム・シーア派民兵組織ヒズボラとの間で内戦が続いている。ここでもアブドラ国王は密かに調停に動いている。
 1982年、レバノン南部に侵入したイスラエル軍に徹底抗戦したヒズボラは、戦後に政府軍などが対立、内戦状態になった。このときもサウジ政府が動き、マッカ郊外の避暑地タイフに関係首脳を招き「タイフ宣言」をまとめて、挙国一致内閣を成立させた。
 2000年にイスラエル軍が無条件撤退したのは「ヒズボラの勝利」とする勢力がイ軍撤退後の空白地帯を支配し、再び政府軍などと対立した。05年マロン派キリスト教徒のハリリ 首相が暗殺されると、挙国一致内閣は瓦解して宗派対立による武力衝突が再燃した。
 アブドラ国王はヒズボラ幹部をリヤドに招き、他宗派との融和を説く一方で前駐米大使バンダル殿下をテヘランに派遣、ヒズボラの生みの親であるイランに協力を要請した。イランも特使として最高安全保障委ラリジャニ事務局長をリヤドに送り、イラン最高指導者ハメネイ師からの親書をアブドラ国王に手渡した。親書には対米関係の改善を要請する内容があったという。会談で国王は「われわれはイランがやろうとしていることに反対はしない」と、イランの核平和利用を容認する発言をしている。
 このあと、アブダラ国王は辞意を表明していた駐米大使トルキ殿下の後任に国王の外交顧問のジュベイル氏を任命した。同氏はノーステキサス、ジョージタウンの両大学を卒業した知米派。イランと交渉するサウジへの懸念を米首脳から払拭する狙いがうかがえる。


イラク安定にも適用?
 イラクのシーア派政権成立はアラビア半島シーア派を元気付けた。バハレーンではシーア派のデモ隊と警官隊が衝突して死傷者を出し、イェメンでも先月末、サウジ国境に近い山岳地帯でシーア派地下組織が政府軍を衝突、政府軍に26人の死傷者を出している。
 サウジには石油地帯である東部州を中心に200万人のシーア派教徒がいるといわれるが、周辺国のような騒動は起きていない。サウジの対イラン外交が奏功しているという見方もある。
 イスラム教スンニー派を代表するサウジとシーア派大国のイランが協調してレバノンの宗派間の調停に当るのは初めてではなかろうか。このサウジ、イランの共同作業がレバノンで成功すれば、宗派間抗争に悩むイラクにも適用できるかもしれない。(07年2月9日記)


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