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   或る夜の出来事 (1934年 ) IT HAPPENED ONE NIGHT
                    〜難攻不落のエリコの壁もラッパの音とともに崩れ落ちた〜
監督:フランク・キャプラの傑作中の傑作とされる作品。
撮影:ジョセフ・ウォーカー
出演:クラーク・ゲイブル、クローデット・コルベール、ウォルター・コノリー、ジェームズン・トーマス、アラン・ヘール、ワード・ボンド、エディ・チャンドラーほか

1934年アカデミー賞主要5部門受賞(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)
1934年キネマ旬報ベストテン第5位

 大富豪の1人娘エリーが、頑固な父の承諾を得ずに飛行家キングと婚約して、父のヨットに軟禁されます。父の干渉に耐え切れなくなった彼女は海に跳び込んで船から逃げだします。そして、キングのいるニューヨークへ向かうため長距離夜行バスに乗ります。バス中で新聞記者のピーターと知り合いになり、二人の珍道中が始まります。一方、娘の失踪を心配する父は1万ドルの懸賞金をかけて娘の行方を捜させます。ピーターは新聞記事でこのことを知りますが、賞金には興味がありません。途中、橋が洪水のために壊されていたり、探偵の捜索の手が延びて来たり、新聞記事を見て気づいたバスの乗客がいたり、いろいろな出来事が起こりますがピーターの機転によって難を逃れていきます。

 橋が通れなくなった時、やむを得ずピーターが宿屋の一室を借りるシーンがあります。
部屋には、左右に分かれてベッドが二つあります。その間にピーターがロープを張り、そこに毛布をかけてプライバシーのために仕切りをします。壁代わりです。そして、ピーターがエリーに向かってこう言います。 
  
「これは、エリコの壁だ。
ヨシュアがラッパを吹いて壊した壁より薄いが、
俺はラッパを持っていない。」 
(?????聖書を知らなければ一体なんのことか分からないセリフです。)              
 
じつはエリーを安心させるために、自分には下心がないことを、聖書を引用して表現しているのですが、聖書を読んだことがあれば、すぐに「ハハーン」とその意図が分かるのですが、聖書を知らないと何のことやらさっぱり分からないセリフです。そして、この「エリコの壁のやりとり」が、最後に、なるほどと効いてくる大切なシーンになっています。
                           
 反発しあいながらも、互いに惹かれあっていく2人ですが。しかし所持金を使い果たして、しかたなく徒歩でニューヨークをめざします。野宿をしたり、ヒッチハイクをしたり苦楽をともにして、ニューヨーク郊外でバンガローに頼んで泊めてもらいます。ここでも2回目のエリコの壁が仕切られます。

 その夜、ピーターに彼女は、自分の思いを打ち明けますが、ピーターは彼女を愛しながらもその思いを素直に表現することができません。そして、文無しの彼はバンガローに払う金を工面するため、夜中に宿を抜けて勤務先の新聞社に資金の掛け合いに出かけます。しかし、そのことでピーターが賞金目当てだと誤解した彼女は、父に電話をして出迎えを依頼します。お互いを誤解したまま別れてしまう二人。エリーは失意の中、飛行家キングとの結婚を決意します。しかし、父は娘の浮かぬ気分を見抜き、娘の本心を知りピーターを呼んで真意を問いただして、結婚式の途中から娘をピーターのもとへと逃がしてやります。なんと粋な計らいでしょう。相当な頑固親父でしたが、娘可愛さは本物でした。

 
ピーターから父親に電報が入ります。その文面が伏線の張られていた「エリコの壁……」のセリフとつながっていきます。         
 「エリコの壁が崩れそうです」
とピーター。
父親は召使に、「直ちに壁を崩せ」と打ち返してやれと命じます。
 
こうして、ピーターとエリーは田舎の安宿で新婚の夜を迎えることになります。
 いよいよラストシーン。
 二人を迎えた宿屋の夫婦のやり取りがおかしいのです。
 次のような会話ですが、前述したエリコの壁のセリフがここに効いてくるのがミソです。


  「ヘンな夫婦だな」
  「部屋を毛布で仕切っているのよ。何かしら?」
  「ラッパを買わされて届けたよ。」
  「ラッパ?ラッパで何をするの?」
  「知るもんか」
  「♪♪♪♪♪……」 ラッパの音が鳴り響いたかと思うと。
 
 二つのベッドを隔てていた仕切り壁代わりの毛布(エリコの壁)が取り払われて……
    ……THE END


<旧約聖書 ヨシュア記6章によると>
 
エリコはとても堅固な城壁都市でした。イスラエル人は一人としてその壁を通り町に入った者がありません。しかし、神に導かれたモーセを指導者として、エジプトを脱出してきたイスラエルの国民が、約束の地カナンに入るためには、このエリコの町を何が何でも通過しなければなりません。モーセの後継者ヨシュアは頭を悩ませます。そんな時、エリコを通過する不思議な方法が神からヨシュアに示されました。しかしそれは、とても人間の考えでは納得できる方法ではありません。でもヨシュアは神が示した方法に従い実行します。日頃から神を信頼し、神に忠実なヨシュアだからこそ神の導きに従えたと言えます。

 神が示された方法というのはこうでした。
「あなたがた戦士はすべて、町のまわりを回れ。町の周囲を一度回り、六日、そのようにせよ。七日目には、七度町を回り、祭司たちは角笛を吹き鳴らさなければならない。」
そして、
「あなたがたがその角笛の音を聞いたなら、民はみな、大声でときの声をあげなければならない。」
 
ヨシュアの指示に従って、イスラエルの民はときの声をあげ、祭司たちは角笛を吹き鳴らしました。するとどうでしょう。「民が角笛の音を聞いて、大声でときの声をあげるや、城壁がくずれ落ちた。」とあります。ヨシュアの率いるイスラエルの軍は、戦わずしてエリコの壁を破り、町に攻め込むことができたのです。
これが「エリコの壁」の由来です。人間的には難攻不落と思えるものでも神には不可能はないという見本のような出来事です。

 旧約聖書のヨシュア記1章9節にはこんなことばもあります。
「わたしはあなたに命じたではないか。
強くあれ。雄々しくあれ。恐れてはならない。おののいてはならない。
あなたの神、主が、あなたの行く所どこにでも、あなたとともにあるからである。」

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