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   エルマー・ガントリー/魅せられた男 (1960) ELMER GANTRY
                         〜すべてを覆い、許し受け入れる十字架の愛〜
監督:リチャード・ブルックス
撮影:ジョン・アルトン
音楽:アンドレ・プレヴィン
出演:バート・ランカスター(エルマー)ジーン・シモンズ(シャロン)ディーン・ジャガー アーサー・ケネディ(新聞記者ジム) パティ・ペイジ シャーリー・ジョーンズ(売春婦ルル)ジョー・マロス エドワード・アンドリュース ジョン・マッキンタイア

1960年アカデミー賞3部門受賞(主演男優賞バート・ランカスター 助演女優賞シャーリー・ジョーンズ 脚色賞)2部門ノミネート(作品賞、劇・喜劇映画音楽賞)  
1960年NY批評家協会賞 男優賞受賞(バート・ランカスター)
1960年ゴールデン・グローブ賞 男優賞(ドラマ)受賞(バート・ランカスター)
1960年 英国アカデミー賞3部門ノミネート(作品賞(総合)男優賞(国外)バート・ランカスター 女優賞(国外)ジーン・シモンズ)


 タイトルバックには十字架がいろいろな角度から映し出されて、ラストも十字架が映し出されています。物語は、キリスト教の“信仰復興運動(リバイバリズム)”を内側から描き、ひとつの側面を問題提起しています。

 口八丁手八丁の敏腕セールスマンのエルマー・ガントリー。酒も女も腕力も人には負けず、見るからに下品で粗野な男。しかし若い頃、神学校に学び、聖書を引用して説教することに長けています。たとえば、夜更けの酒場で、福祉募金を集める協力をしようと面白半分に演説して寄付をすすめる場面がありますが、ここでも、マタイの福音書6章3節
「あなたは、施しをするとき、右の手のしていることを左の手に知られないようにしなさい。」を引用して、「右手の行動を左手に知らせるな」と、金を集めます。こんなふうに、随所に聖書の箇所が引用されているので一つ一つ確認するのも楽しみかも。

 そんな彼が、ある日ポスターにひかれて参加した伝道集会で若くて美しい女伝道師シャロンに一目惚れしてしまいます。エルマーは巧みに宗教団体に入りこみ、自分の体験に色をつけて名演説を披露。たちまち聴衆を魅了する説教者になりますが、この時点の彼は、“偽善者、詐欺師”と言う方が相応しい人物かも。口では聖書の教えを説き人の心をひきつけ信じさせながら、自分は本心から神を信じているわけではありません。

 伝道師シャロンも情熱をむき出しにするエルマーを拒みながら、その魅力に抗しきれず体を許してしまい聖女ではなく平凡な女であることを露呈します。水を得た魚のように弁舌を繰り出し、名を売り出していくエルマーは売春撲滅を叫び、先頭に立って売春宿に乗り込みます。しかしそこで、かつて学生時代に自分が棄てた女ルルに出会います……。

 エルマーの偽善を知ったときのシャロンは悲痛な叫びで祈ります。
「神よ、何故お見捨てになられるのか」
 このセリフ、聖書の次の箇所に出てくるイエス・キリストが十字架の上で祈られた言葉そのものだと思いませんか。
「三時ごろ、イエスは大声で、『エリ、エリ、レマ、サバクタニ。』と叫ばれた。
これは、『わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか。』という意味である。」(マタイの福音書27:46)


 劇中歌われる賛美歌の一つ。
「私はすすむカナンへの道を カナンを目指して
 私はすすむカナンへの道を 神に栄光あれ 私は生かされていく」

 人集めとお金が絡むと、人の心から純粋さが薄れていくのは世の常です。
 人間の醜さ、欲望、虚栄、罪の恐れ、病気の不安、死後の世界、……こころを苛むいろんなものが噴き出してきて、それらを打ち消したい思い、何かにすがりたい、何かを信じたい、映画の登場人物たちにはそんな弱さが充満していますが、そしてそれは、私たち観客の姿の投影でもあるかもしれません。それらすべてに解決を与えてくれる唯一の真理が「十字架の愛」だと私は受け取りました。

 信仰復興運動は、19世紀にイギリスで起こったそうですが、歴代の米大統領就任式の祈りを担当したビリー・グラハム師が行った1957年ニューヨーク市マディソンスクエア・ガーデンでの16週間に及ぶ信仰復興運動には、200万を超す人々が参加し、同年、キリスト教信仰復興運動が初めてテレビ放映されたとのこと。この作品の製作(1960年)にも影響を与えているのかも?



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