敗北の唄



その男の場合はこうだ

彼は仕事を終えて

駅への道で週刊誌を買う

電車では座れない


商店街をぐるりとまわり

誰にも気づかれずに

素早く金を使い果たして

逃げるように部屋に着く


テレビの時間には少し早い

溜まったグラスを洗い

古い雑誌を選り分けて部屋の隅に

小さな山をつくる


酒を呑みながらテレビに向かい

時に声たてて笑い

少しの酒が古い幸せ

くれるまで泣く


軽率なこと、怠惰なことが

いちばん悪いこと

空気に触れると燃え尽きてしまう

・・・・・・・・


俺には唄と夢しかない

それすら酔いつぶれて

大切なことを唄った唄も

どこかに置き忘れてしまう


その男の場合はこうだ

神が与えてくれた

この男の場合はこうだ

穀(ごく)を食いつぶした




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