拝啓、三島由紀夫様、
私、将来は一流を目指す44才の男性です。
妻と子のある身に何の将来かと、はなはだ疑問でございます。
海辺の町に暮らしますが海を見る暇などございません。
豊饒の海、第1部第2部拝読させていただきました。
あなた様のゴージャスな才能にほとほと感服いたしました。
さて、第3部こそはもっとエッチな展開になるのでしょうか?
徹頭徹尾、本物であるがゆえに、
どこかしら嘘くさい、三島由紀夫様へ
意に沿まぬ、は仕事の枕詞でしょうか?
なにをするにも疲れのでる年令のせいでございましょうか、
ここ数年あれのそこには触れておりません、ですが週に3度は自らまいります。
あなた様の100万分の1の文才があればと焦がれます。
あなた様にとって言葉とはいったいなんだったのか、と考えることがあります。
まさか、単なる武器だったはずはありませんでしょう。
徹頭徹尾、本物であるがゆえに、
どこかしら嘘くさい、三島由紀夫様へ
あなた様の作品の中では宴のあとを、
一等面白く読ませていただきました。
なお、仮面の告白と金閣寺は未だ読んでおりません。
ところで腹に刀突き立てるとはどういった心持ちでございましょう?
私、爪と指のあいだに針が刺さるのを考えただけで、
身体のふるえが、がたがたがたがた止まりません!
徹頭徹尾、本物であるがゆえに、
どこかしら嘘くさい、三島由紀夫様へ
ものに息吹を与えるのは、あなた様の生きざまでしょうか?
ことを言葉に閉じ込めてしまうのは、あなた様の死にざまでしょうか?
私、はからずもあと1週間であなた様と同い年になるのでございます。
今に世界中のお馬鹿さんたちが私の名前を呼び捨てにして、
とやかく、なにかと批評しあう日のことを夢想いたします。
ささやかな、まことにささやかな愉しみでございます。
徹頭徹尾、本物であるがゆえに、
どこまでも
嘘くさい、三島由紀夫様へ
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